ノンプロフィット・フィルムの現在――新たな文脈を求めて
PART II
上映:日本の実験映画史をたどる
いくら斬新な新しい映画が作られようと、上映されなければ観賞できない。上映プログラムを組むにあたり、どのような視点からアプローチすればいいのか。日本の実験映画を系統的に紹介する2つの異なる切り口を提示し、キュレーション・作品運用の可能性とおもしろさを考える。FMICメンバー、西村智弘の作品選出・解説つき。
プログラムA:反復と構造 |
アートマン
Atman-
日本/1975/カラー/16mm/11分
監督:松本俊夫
松本俊夫は、戦後日本の実験映画を支えてきた先駆者であり、多くの作家に影響を与えてきた。ドキュメンタリー映画、劇映画、ビデオアートなども手がけ、それぞれの分野で先駆的な業績を残している。『アートマン』は、赤外線フィルムを用いた作品で、この作家の構造的な関心が端的にあらわれている。
LE CINÉMA・映画
Le Cinéma-
日本/1975/モノクロ/16mm/5分
監督:奥山順市
奥山順市は、フィルムそのものがもつ可能性を一貫して追求している映像作家である。映画のメカニズムにもとづく実験的なアプローチを続けているが、そこからつねに新たな発見を引き出している。『LE CINÉMA・映画』では、映画の時間が1秒24コマで成立しているという事実そのものを作品化している。
変形作品第3番作品(ミックス・ジュース)
Metamorphose Vol. 3 (Mix Juice)-
日本/1985/カラー/8mm/15分
監督:黒坂圭太
黒坂圭太は、写真を用いたアニメーションで独自の世界を展開する。このところグロテスクなイメージの世界を作品にすることが多くなっているが、本作は初期シリーズのひとつで抽象的な傾向をとどめている。いくつもの光景をまるでミキサーにかけたかのように混ぜ合わせてしまう作品。
青い手すりのある石段
The Stone Steps with a Blue Handrail-
日本/1990/カラー/8mm/7分
監督:西村智弘
ミニマル・ミュージックの作曲家、スティーヴ・ライヒによる「ゆるやかに移りゆくプロセスとしての音楽」の理論を映像によって実践する試み。ある特定のパターンを一定の法則に基づいてずらしていくことで、予測のつかない変化をつくりだそうとした。曲はライヒの「ピアノ・フェイズ」を使っている。
不和の虹
The Rainbow of Odds-
日本/1998/モノクロ/16mm/8分
監督:末岡一郎
既存のフィルムを用いて新たな作品を製作するファウンド・フッテージの作家だが、フィルムの現像はみずから行っている。本作で用いられているのは『オズの魔法使い』。「虹の彼方に」を歌う有名なシーンを何度も反復させることで、規範的な叙述のスタイルを脱構築し、別の映画体験へと移行させている。
部屋/形態
Gestalt-
日本/1999/カラー/16mm/7分
監督:石田尚志
石田尚志は、みずから描いた絵をコマ単位で撮影し、複雑な抽象映画を製作する作家。『部屋/形態』は、実物の部屋の壁に直接ペイントすることによって製作された作品で、この作家の空間に対する独自なこだわりがよくあらわれている。近年はバッハの「フーガの技法」の作品化に取り組んでいる。
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