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アジア千波万波スペシャル
ノンプロフィット・フィルムの現在――新たな文脈を求めて
PART II 上映:日本の実験映画史をたどる
プログラムB:異化とイメージ

Ai (LOVE)


- 日本/1963/モノクロ/16mm/10分
監督:
飯村隆彦

1960年代の初頭から実験的な映画を撮りはじめ、今日においても国際的に活動を続ける映像作家である。概念的なビデオ作品でも知られるが、初期作品である『Ai (LOVE)』は、人体のクロースアップで成立しており、官能的なイメージをもつ。オノ・ヨーコが即興で制作した音が使われている。



東京蜜月

Tokyo Honeymoon
- 日本/1985/カラー/8mm/13分
監督:
青井克己

かつて関西を中心に自主映画活動を展開した「ヴォワイアン・シネマテーク」のメンバーのひとり。プライベートな視点を保ちつつ、強靭なイメージをつくりだす作家である。本作は、作家にとって異郷である東京をテーマにした作品で、さまざまな風景との出会いを緊張感のある映像の連鎖によって示している。



水星

The Mercury
- 日本/1995/カラー/8mm/20分
監督:
長屋美保

長屋美保は、プライべート・ドキュメンタリーを製作することから出発したが、そこからより自律したイメージを展開する作品へと移行していった。『水星』では、稲妻や明滅する蛍光灯など、光のあるさまざまな情景を積み重ねることによって、内向的なイメージをひとつの解放へと導いている。



揺れる椅子

Rocking Chair
- 日本/2000/カラー/16mm/13分
監督:
狩野志歩

なにげない日常的な光景をストイックに撮影しつつ、映画のなかにしか存在しえない独特な空間と時間のイメージを出現させる作家。『揺れる椅子』は、ゆるやかな明暗をくりかえしながら室内を撮影した作品である。今年トロントで開催されたイメージ・フェスティバルで最優秀国際映画賞に選ばれている。



-- 日本実験映画の断面

 映画における前衛的な表現の探求は、1920年代のヨーロッパにおいて始まった。とくにダダイズムやシュルレアリスムに属する美術家たちが、従来の映画とはまったく異なる自由な表現の開拓に着手し、その後の実験映画の先駆者となった。

 そうした作品に共通していたのは、映画が本質的にもっている独自性を強調したことである。この場合に、2つの側面から映画の本質を考えることが可能である。ひとつは、映像が提示するイメージの純粋性であり、もうひとつは、映像を成立させている構造的な枠組みである。たとえば、前者の側面はシュルレアリスム映画に指摘できるし、後者は抽象映画や構造映画に認めることができる。この2つは厳密に区別できないが、実験映画が本来もっている大きな特徴として指摘することができる。

 ヨーロッパの実験映画の影響を受けた作品が日本に誕生したのは1930年代のことである。日本にはかなり早い時期から前衛的な映画表現が存在していた。しかし、そうした映画の製作がひとつの運動にまで高まるのは戦後のことである。とくに1960年代以降は、アメリカのアンダーグラウンド映画に触発されて多くの映像作家が輩出された。その後も多くの作品がつくられ、今日に至っている。世界的に見ても日本は、実験映画の製作に熱心な国のひとつに数えられる。

 本プログラムは、日本の実験映画を系統的に紹介することを目的としており、実験映画の開花した1960年代から今日に至るまでの作品が選ばれている。「反復と構造」、「異化とイメージ」という2つの区分は、もともと実験映画がもっていた2つの方向にそのまま対応している。この2つのプログラムによって、日本の実験映画が歴史的な文脈のもとに成立していること、また同時に、日本という国のなかで独自な発展をとげていることが明らかになるだろう。

西村智弘

1963年生まれ。1990年、第13期イメージフォーラム映像研究所修了。在籍中から映像作品の製作をはじめる。1993年、美術出版社主催「第11回芸術評論」に『ウォーホル/映画のミニマリズム』で入選。以後、美術評論、映像評論の活動を開始する。執筆の他に、展覧会の企画監修、公募展の審査員などをつとめる。共著に、京都造形芸術大学編『映像表現の創造特性と可能性』(角川書店)がある。


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