移民者の心
My Migrant Soul-
バングラデシュ/2000/ベンガル語/カラー、モノクロ/ビデオ/35分
監督・脚本・撮影・編集・製作:ヤスミン・コビル
録音:ロトン・パル
ナレーター:シャージャハン・バブ
提供:ヤスミン・コビル
Yasmine Kabir
35 Indira Rd., Apt E-602 Dhansiri Apts Dhaka 1215 BANGLADESH
Phone: 880-2-9131304
E-mail: aykabir@dhaka.agni.com
今は亡き青年バブが家族に送ったカセットテープには、出稼ぎ労働者としての窮状を語る彼の生の声が残されている。より良い生活を求め、希望に満ちてマレーシアへ旅立ったバブは、自分の社会的地位が奴隷のそれにまで貶められていることをすぐに認識した。ヤスミン・コビルは、録音された声にマレーシアの映像を合わせる。その声は、故国の歌を痛々しく歌い上げ、母親に絶望感をもって窮状を打ち明けている。バブにとって、グローバル経済は救いなどではなく、身のあだとなった。
【監督のことば】私が最初にバブのことを知ったのは、「出稼ぎ労働者、マレーシアで搾取されたあげく死亡」という見出しの新聞記事だった。その記事は、持ち物を全て売り払い、無一文で自国を後にした青年についてだった。青年の追い求めていた夢は実現することはなかった。夢と希望、そして野心に満ちていた青年は、全ての尊厳、そして、ついには命まで奪われてしまった。この窮状に陥った青年の悲劇は、私の琴線の奥底まで触れた。彼の家族と連絡し、早く人々に伝えなければという責任感でバブの話をドキュメンタリーに収めることに決めた。個人的な視点からひとりの人間の話を伝えることにより、他の数え切れない出稼ぎ労働者の窮状に焦点を当てようとした。家族とのインタビューや交流を通じ、同じような話を幾つも聞いた。それはすなわち、単純労働者の話であり、彼らの多くはそれまで建設現場で働いたことなどなく、帰国するときは棺桶の中に入って戻ってくるのである。グローバリゼーションの力という、自分の理解を超えた力にはじめて直接ぶつかった者たちの話である。その力とは、十分な見返りを与えることなく搾り取るだけ搾り取る、文字通り搾取だ。
「市場では人間を魚や野菜のように売ったり買ったりしている。」亡くなる前のバブの言葉である。
私の作品を通じ、バブをはじめとした出稼ぎ労働者の声に耳を傾ける人が現われることを希望してやまない。
ヤスミン・コビル
バングラデシュのインディペンデント映画作家。監督作に『Death Chant』(1992)、『A Day at the Embassy』(1996)、『For Solaiman』(1997)、『A Mother's Lament(Duhshomoy)』(1999)がある。 |
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