ノンプロフィット・フィルムの現在――新たな文脈を求めて
PART I
トーク:映画作家による情報センター/日本とタイ
日本映画とタイ映画。娯楽商業映画ではどちらも国際的に大評判の昨今。ではノンプロフィット・フィルムの情報収集・流通・運用はどうなのだろうか? FMIC代表の末岡一郎がキック・ザ・マシンのアピチャッポン・ウィーラセタクンとタイ短編映画祭ディレクターのチャリダー・ウアバムルンジットに話を聞き、今後を語り合う。
-
キック・ザ・マシン
www.kickthemachine.com - バンコクの映像作家たちの運営による小さな会社。新世代の映像作家たちが必要な機材と精神的な激励を受けられる場を提供する。映像観賞の未来形を体現するデジタル・フォーマットを基軸に、ケーブルテレビ放映・映画祭上映・マルチメディアインスタレーション制作・35mmへのデジタル・ブローアップなどをサポート。若い才能の配給支援・宣伝の仕事を担う。ウェブサイト(2001年11月リニューアル・オープン!)には新作のデータベースが随時更新されている。さらに、ギャラリーのProject 304 と共同でバンコク実験映画祭を主催している。理事は『真昼の不思議な物体』(本年「インターナショナル・コンペティション」上映)のアピチャッポン・ウィーラセタクンや『エキゾチック概論』(1999年「アジア千波万波」上映)のマイケル・シャオワナサイなど。
-
タイ短編映画祭
- 劇映画を中心とするバンコク国際映画祭のほかに、地元の若い才能を支援する短編映画のコンペティションを併設し、古典映画の特別上映や世界の作品上映も含むタイ短編映画祭が毎年開催されている。映画祭ディレクターは「アジア千波万波」審査員チャリダー・ウアバムルンジット。
今日、世界規模で映像文化の多様化と拡大が進む中、とりわけノンプロフィット(非商業的)に製作された映像作品と、その作家のおかれた状況は、決して楽観的とは言えない。一般に、こうした作品に対して、公的な芸術創作支援はあまり充実していないのが現実だが、それゆえ作家は活動を持続する為に、多くの困難を乗り越えなければならないのが現状である。さらにはその事によって、豊かな才能を持った作家が、結果的に活動を断念してしまうケースも多々みられる。
その一方で、近年特に日本を含めたアジア諸国の作家・作品に対する国際的な期待が高まってきてもいる。実際、最近も幾つかの国際映画祭や映像イベントにおいてそうした映像作品を紹介するプログラムが組まれている。
どうやら作家と批評家や配給者、そして何より観客とを結びつける手だてを構築する、その事が今まさに必要とされているようだ。さらには、今日の視座からかつての作品を再読する必要もある。この事は、今まで私たちがあまり意識的に考えて来なかった事柄のひとつと言えよう。私たちはまだまだ多くの見過ごされてきた問題を抱えている。今回ここでは、そうした現状の問題点を確認し、よりよい方向性を模索する機会となるだろう。
末岡一郎
1965年、札幌生まれ。映像作家。1985年から映像製作開始。また、1994年には映像研究会「キノ・バラージュ」(URL: www.h3.dion.ne.jp/~k-balazs)を発足、月1回の会合として現在も継続中。現在、東京都内の専門学校で映像製作を教える傍ら、8mmフィルムの自家現像ワークショップを美術系大学等で行う。『不在の扉』(1992)が1994年オーバーハウゼン国際短編映画祭に招待。『不和の虹』(1998)が昨年、ポンピドゥー・センター主催「monter/sampler」展で取り上げられる。国内外で上映多数。主な作品:『AMOK』(1985)、『死と鏡』(1993)、『脱落した機構』(1997)、『並置・家族』(1998)、『つぎはぎ細工』(2000)、『バンビの初恋』(2001)。 |
●アジア千波万波|夢の中で|愛についての実話|移民者の心|僕たち|線路沿い|不幸せなのは一方だけじゃない|この冬|ジャリマリ|夢の王|友人、スー|パフォーマンス|母の家は入り江|アテフェと水|Blessed ―祝福―|MAYA|団地酒|異相|村の新しい一歩|別れ|パンジーと蔦|空色の故郷|居留―南の女|ニュースタイム|マージナル|種まき|塩素中毒|集集大怪獣|ミックス・フルーツ・バナナ・スプリット|セールス|落ちて行く凧|時の行進|昔むかし|HUMMADRUZ 〜大地の呼び声〜|水と消えゆく ●アジア千波万波招待作品|ミュージシャン|日蝕|騒音の向こう側|「流離島影」シリーズ|03:04|南之島、男之島|西の島|専売特許・釣魚島|サイレント・デルタ ●審査員|佐藤真|チャリダー・ウアバムルンジット ●アジア千波万波スペシャル|ノンプロフィット・フィルムの現在/新たな文脈を求めて |