English
[フィリピン、アメリカ]

ノー・データ・プラン

No Data Plan

- フィリピン、アメリカ/2018/英語、タガログ語/カラー/デジタル・ファイル/70分

監督、撮影、編集、音響:ミコ・レベレザ
ナレーション:キャロリナ・ファンディーニョ=サルセド、アリスティルデ・カービー、オーロラ・レベレザ、リー・ナカム、ミコ・レベレザ
配給:Sentient Art Film
提供:ミコ・レベレザ

「母さんは2つの電話を使っている」。母親を中心とした家族の物語を伏線に、複数のアメリカの声がかぶさっていく。監督の家族がいるカリフォルニアからNYの大学へ戻る間の列車に揺られながら、物理的でないどこかへ進む映画という旅。ID提示やICE(移民・関税執行局)に見つかることの恐れがつきまとう存在であると同時に、列車から一時下車して休む時の風景や人々の姿から、監督の目に映る「そうではない」アメリカの断片を見せてくれる。(WM)



【監督のことば】巨大で騒々しいコンテナの中に、人間、荷物、汚物、電子レンジで調理できる食べ物が詰め込まれている。3日間、私はコンテナの窓に映る動く光の残余を眺め続けた。まるで大陸を横断する長いドリーショットのようだ。ロサンゼルスからニューヨークまで、私は偉大なアメリカ横断紀行を逆にたどる。後ろの窓から見える線路は、さながらフィルムストリップだ。輸送コンテナが作り出す16:9のスクリーンが、窓に頭を乗せて眠っている人々の、ほんの5から8フィート先を通り過ぎる。天の川銀河は、そのはるか遠くまで届く触手に比べるとあまりにも小さい。山、樹木、原油、プラスチック、ガラス、フライドポテト、靴を移動させる幽霊。組織化されたものすべてが別の場所に運ばれる。エアコンのおかげで、私は眠りに落ちる。目を閉じても、動く景色はまだ続いている。マニラの空港にいる夢を見る。目を覚ますと別の州に入っていた。国境警備隊の白い車が2台、次の駅のプラットフォームの両端にやってきて停まった。覆面パトカーも1台いる。トランシーバーを持った私服警官が、他の2人に指示を出す。彼らは今、私の窓のすぐそばまでやって来た。その時点で、ゆっくりと安定して動いていた私のカメラが急に乱れる。手の中にある手ぶれ補正装置が機能しなくなる。まるでカメラが、突然自らの移民ステータスを自覚したかのように。


ミコ・レベレザ

1988年、フィリピン・マニラ生まれ。実験映画作家にして不法移民。幼少期にマニラから移って以来、25年以上にわたって不法移民としてアメリカに滞在している。滞在許可、同化、無国籍という状態と闘い続けた経験が、『ドロガ!』(2014、YIDFF 2017)、『ディスインテグレーション93−96』(2017、YIDFF 2017)、そして長編デビュー作『ノー・データ・プラン』(2018)を生み出してきた。その作品は、ロッテルダム国際映画祭、YIDFF、オーバーハウゼン国際短編映画祭、トゥルー/フォールス映画祭、イメージズ・フェスティバル、バーウィック・フィルム&メディア・アーツ・フェスティバルなど、世界各国の映画祭で広く上映されている。『ディスインテグレーション93−96』は、専門家が選ぶ秀作映画の配信サイトMUBI.comで紹介された。2018年、『フィルムメーカー』誌が選ぶ「インディペンデント映画のニューフェイス25人」の一人に選出される。