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[日本、メキシコ]

セノーテ

Cenote
TS'ONOT

- 日本、メキシコ/2019/マヤ語、スペイン語/カラー/DCP/75分

監督、脚本、撮影、編集:小田香
ナレーション:アラセリ・デル・ロサリオ・チュリム・ツゥン
録音:アウグスト・カスティリョ・アンコナ
音響:長崎隼人
エグゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司
プロデューサー:マルタ・エルナイズ・ピダル、ホルヘ・ボラド、小田香
企画:愛知芸術文化センター、シネ・ヴェンダバル、フィールドレイン
制作:愛知県美術館
提供:小田香
www.fieldrain.net

メキシコ、ユカタン半島の北部には、地下の空洞に水が湧き出たセノーテと呼ばれる泉が多く存在する。古代マヤでは唯一の水源であり、雨乞いの儀式の場でもあった。現世と黄泉を結ぶと信じられたセノーテをめぐって交差する人々の今と昔。泳ぐ魚、子どもたち、老人、祭り、闘牛、人々の顔……。そこに流れるのは、「精霊の声」「マヤ演劇のセリフテキスト」など。光と闇の魅惑の映像に遠い記憶がこだまする。(YK)



【監督のことば】セノーテはメキシコ・ユカタン半島北部に何千とある自然にできた地下の泉です。海が撮りたいとメキシコの友人に相談したら、海もいいがメキシコには美しい泉があると、セノーテのことを教えてくれました。セノーテのことを調べると、古代マヤ人との深い関わりがみてとれました。

 セノーテを体感するために、ロードトリップのようなかたちで村から村へ移動し、家庭用水のための井戸のようなものから、海と繋がっているものまで、大きさや形態も様々なセノーテの中に入りました。道中、セノーテの近くで暮らす人たちに、泉にまつわる記憶や伝承、マヤとの関わりについて伺いました。ある人は、我々のリサーチのことを知ると、突然なにかの朗唱をしてくれました。マヤの文化や伝統を絶やさないために行われる演劇があり、その劇中の台詞とのこと。『セノーテ』は、このような出会いが重なって完成した作品です。水中でも陸上でも、夢かうつつかはっきりしない瞬間の連続でした。

 最後に、「地下が好きなのですか?」とたびたび尋ねられます。前作では炭鉱に潜り、この作品では地下の水中洞窟が主な撮影場所になっているからです。未知の空間を覗いてみたいという気持ちとともに、地底まで降りれば、忘れてしまっている人間としての記憶の古層に触れられると感じているからかもしれません。


小田香

1987年大阪府生まれ。フィルムメーカー/アーティスト。イメージと音を通して人間の記憶(声)――私たちはどこから来て 、どこに向かっているのか――を探究する。2010年、中編映画『ノイズが言うには』が、なら国際映画祭Nara-wave部門で観客賞を受賞。 2013年、映画監督のタル・ベーラが陣頭指揮する若手映画作家育成プログラム「フィルム・ファクトリー」に第1期生として参加し、2016年に同プログラムを修了。2015年、ボスニアの炭鉱を主題とした長編第1作『鉱 ARAGANE』(2015)がYIDFF 2015アジア千波万波にて特別賞を受賞。2017年、長編第2作『あの優しさへ』(2017)がDOKライプツィヒにてワールドプレミア上映された。