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[イラン]

エクソダス

Exodus

- イラン/2019/ペルシャ語/カラー、モノクロ/デジタル・ファイル/80分

監督、脚本、編集、製作:バフマン・キアロスタミ
撮影:ダウード・マレキ
録音:アリ・アラウィ
配給:Documentary and Experimental Film Center (DEFC)
www.defc.ir

経済制裁の煽りを受け、通貨価値が急落したイラン。安価な労働力として滞在を黙認されていたアフガニスタンからの不法滞在者たちは、危険かつ不当な条件で出稼ぎする意味を失い、続々と帰還センターに押し寄せる。仕事のこと、家族のこと、宗教のこと。管理官と越境者との間で交わされる会話は残酷な異端審問のようにも、親密な身の上話のようにも聞こえる。ボブ・マーリーの名曲「エクソダス」が独特なリズムを刻む、グローバル資本主義時代の大脱出劇。(ET)



【監督のことば】2017年、トランプ大統領は新たなイラン制裁を発動した。その影響でわが国は経済危機に陥り、そして私は『エクソダス』のアイデアを思いつく。イラン・リヤルが暴落し、アフガニスタンの労働者が次々とイランから出ていった。自らの意思でイランを去るアフガニスタン人は、イマーム・レザー・キャンプで出国審査を受ける。テヘランの東へ向かう埃っぽいハイウェイの外れにある場所だ。そこを車で通り過ぎたことはあったが、ついに中に入ってみると、キャンプ内部の様子も、彼ら不法移民と内務省の役人との間に交わされる会話も、想像していたものとは全く違っていた。

 どちらも穏やかな口調で、ウィットに富んだ会話だ。あからさまな本音とウソが交錯する。不法滞在者は、出国管理官の前ではどんな人物にもなれる。そして管理官は、婚約、自爆テロ犯、イスラム教のスカーフから、ヤギ飼いの手取り収入まで、どんなことでも質問することができる。

 すべてのブースの上に、「なぜあなたはこの国を出るのか?」という単純な質問が掲げられているように私には思われる。旧約聖書の出エジプト記では、イスラエルの民が何世紀も暮らしたエジプトを離れ、モーゼに導かれて「約束の地」を目指す。アフガニスタン人たちも、同じ気持ちで戦火に引き裂かれた祖国へ帰っていくのだろうか? 彼らがイランを離れるのはそのためなのか? なぜこの国にとどまらないのだろう? 移民に関する疑問は、たいていの場合「なぜ来るのか?」というものだ。しかし彼らが国を出ていくと、私たちは動揺するのである。


バフマン・キアロスタミ

1978年生まれ。テヘランを拠点に活動するドキュメンタリー映画監督、映画編集者、撮影監督。1996年、初のドキュメンタリー映画『Morteza Momayez: Father of Iranian Contemporary Graphic Design』を監督。ドキュメンタリー作品のほとんどは、アートにおける価値と正当性を評価するプロセスを描いているが、革命後のイランにおけるヴィジュアル・カルチャーを定義するディテール――曖昧で気づかれることはないが、それでも目に見える形で存在する――も扱っている。これまでの作品は、『I Saw Shoush』(2002)、『Infidels』(2004)、『Two Bows』(2004)、『Pilgrimage』(2005)、『Re-enactment』(2006)、『Anonymous』(カーヴェ・カゼミと共同監督)(2007)、『Statues of Tehran』(2008)、『The Treasure Cave』(2009)、『Taxi-Tehran』(2011)、『Monir』(2015)。