あの雲が晴れなくても
That Cloud Never Left-
インド/2019/ベンガル語/カラー/DCP/65分
監督、脚本:ヤシャスウィニー・ラグナンダン
撮影:パロミタ・ダル
編集:アブロ・バナルジー
音響:ビギャナ・ダハル
提供:ヤシャスウィニー・ラグナンダン
www.yashaswini.in
ここからそう遠くないある村の話。風車や笛と一緒に、ボリウッド映画のフィルムを使ったおもちゃが手づくりされている。ある母親は単調な仕事をしながら雨を待ち、ある兄弟は月蝕に備えて櫓を組み上げている。子どもたちは鏡を覗き込み、駆け回り、木の枝を大きく揺らし、赤い石を探している。そしてとうとう、待ちわびた夜が来る。村も星も子どもたちも、すべてが回りながら映画になってゆく。(OM)
【監督のことば】この映画は、子どものおもちゃ“キャトケティ”にヒントを得ている。
キャトケティとは、竹の棒に挟まれ、ピンク色に染められたアナログのボリウッド映画のフィルムのフレームがこすられることによって音を出す、回転する赤い輪だ。『あの雲が晴れなくても』は、おもちゃの視点から語られるメリエス風の映画である。撮影者が手に持つカメラそのものがおもちゃとなり、回転し、らせんを描き、上下逆さまとなり、円を描いてスピンする。
おもちゃ職人のバブルは何回も、「このおもちゃは手の中で5秒も回転しないが、我々が立つ地球は時速1,675キロで回転してる。考えてみてくれ。宇宙の中を毎秒、約半キロ動いてるんだ。つまり我々は動く運命、スピンする運命なんだ……」と言う。私たちの映画は、この言葉から始まった。本物のおもちゃ職人たちは日々の作業を通して、宇宙規模の目的意識と真実を体現する俳優であるという、めまいがするほど映画的な世界なのだ。奇妙で宇宙的な造形を、いくつか風景の中に置くことによって、現実とフィクションを気まぐれにミックスされることを目指している。このような介入がフィクション的な部分を高め、職人たちがムルシダバードで生計を立てるため、何巻ものフィルムを切断することで、1フレームずつ漏出する映画へのオマージュとなっている。
現在は、アムステルダムのオランダ国立芸術アカデミーのアーティスト・イン・レジデンス。映画とサウンドの両分野で活動している。主な作品に『Site-Mapping』(2012、ダンス映画)、『Man in the Eye』(2015、物語風のサウンドアルバム)、『Videofolktales』(2016、ビデオ・インスタレーション)、『Project Redtoy: Sun, Moon, Toy, Earth』(2018、インスタレーション)などがある。ドキュメンタリー作品は、今年のYIDFFインターナショナル・コンペティションに参加しているエクタ・ミッタルとの共同プロジェクト「Behind the Tin Sheets」の一環として作られた『In-Transience』(2011)、『Presence』(2012)、『Distance』(2013、DOKライプツィヒで最優秀短編作品賞)がある。