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[中国]

さまようロック魂

The Wandering Rock
流浪的石头

- 中国/2019/中国語/カラー、モノクロ/デジタル・ファイル/93分

監督、撮影、編集、録音、製作:崔兆松(ツィ・チャオソン)
音楽:宝強(バオチアン)、張宏(ジャンホン)
提供:崔兆松

中国陝西省のインディーロック歌手ガンメーカーは、1年前に相棒を自殺で亡くし、現在は一人で音楽活動を続けている。家庭では、熱狂的な宗教家の母と対立しながら、シングルファーザーとして子育てに奮闘中。反体制の嫌疑をかけられ、公安が家に押しかけることも。ロックと生活との間を揺れ動きながら、男は体当たりの単身ツアーに乗り出す……。言論統制や社会のしがらみに喉元を締めつけられた彼の声は低くかすれ、自由を求めて暗闇をさまよう。(ET)



【監督のことば】これは償いの旅である。

北方で重度に汚染された空気を吸っていたとき、私は考えた。自分はなぜまだ生きているのだろうと。昏睡状態の人々の群れのなかで、私は泣き叫ぶ声を聞いた。精神の錯乱した人だった。彼はギターを持ち、歌詞を弾丸に、器用な人たちに向けて発砲していた。彼は数年後の私の姿にそっくりだった。

 時代はかくも鋭利に不条理である。真相を知っている人々は、共謀者であり、犯罪者だ。歌を歌うことは、絶望した人の最後の賛美である。受難者の心は火のように熱い。

 モーゼの声を凡人は知らない。紅の風が漂泊の魂を揺り動かすとき、永遠の自由が漆黒の闇から大きな光を放つ。呪われた大地は山河を覆さんばかりだが、私は喜んでいる。天使がラッパを吹き、あのさまよえるロックを迎え入れるからだ。


崔兆松(ツィ・チャオソン)

インディペンデント・ドキュメンタリーのプロデューサー、監督、カメラマン、映画編集者。1988年4月22日、中国・山東省の小さな村に生まれる。幼い頃から映画芸術を好む。大学卒業後、家庭や社会の専制的な文化に全く同調できなくなる。政府のプロパガンダから遠く離れて、ドキュメンタリーというスタイルで社会の辺境や底辺にいる人々を記録することで、自分の知る中国を表現しようと考える。2016年にインディペンデントでドキュメンタリー映画『双井』を完成。2019年3月に、やはりインディペンデントで新作となる本作を完成させた。