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ヤマガタ・ラフカット!



このプログラムは、作品に満たない短い映像を上映し、世界中から映画祭に集う人たちと共に見て、感じ、語り、聞く場を作ることを目的としている。荒々しく削りだした世界の断片(ラフカット)を頼りに、制作者、観客、批評家、研究者など、あらゆる立場の人々がジャンルを超えて交わる場から、映像と世界との新しい関わりを模索する試みである。



 「ラフカット」とは、映画や映像作品が完成する前の粗編集版(未完成)の状態を指す言葉です。ヤマガタ・ラフカット! では、映画の「作品」という枠組みを一度ほどき、映画祭に集うあらゆる人々が、立場、ジャンル、国境を越えた、「映像そのもの(フッテージ)」との対話の場の可能性を模索します。

 今年で4回目となるこのプログラムは、「見る」ことと同等に、またはそれ以上に「話す」ことを大切にしてきました。制作者によるトークやパネルトークではなく、会場の公開対話のみを行い、監督自身も客席の一人として発言してもらいます。ラフカットを見ることは、完成した映画から零れ落ちる断片を見ることのほかに、映画を完成度とは違う尺度で見ることでもあります。そのため、これまで「批判」に対して自制的な対話の場を構築してきました。

 目の前に映し出される映像をそのままの現実として受け入れ、そこから感じたこと、思ったこと、考えたことをゆっくりと言葉にしていく、言葉にならずとも他者の言葉を聞き、考え続けることで、映像を見るという個人体験から、思考を少し外側に広げることができると考えるからです。

 しかし今年の「ヤマガタ・ラフカット!」は、前回参加者でもあるアヌシュカ・ミーナークシ、イーシュワル・シュリクマール(『あまねき調べ』、YIDFF 2017アジア千波万波上映)との対話を引き継ぎ、「批判」を積極的に導入しようと考えます。「作品」としてジャッジするのではなく、映像との対話の末の「批判」(自分が受け取れなかったもの)を共有することで、自分自身の映像体験を深める場でありたいと思います。

 今回新しい試みとして、対話の前と後に2回のフッテージ上映を行います。対話を通し、一つのフッテージを違う映像体験に変えていくことで、「見る」ことによっても、積極的に映像に関わっていけるのではないかと考えます。

 国内2本、アジア2本のラフカットを上映し、同時通訳で対話を行います。多様な言葉が飛び交う対話の場にご参加ください。

酒井耕、渡邉一孝(プログラム・コーディネーター)