アジア千波万波 |
---|
アジア千波万波 特別招待作品 審査員 |
羊飼い物語/新宿2009+大垣2010
The Shepherd's Story / Shinjuku 2009 + Ogaki 2010-
日本/2011/日本語/カラー/Blu-ray(HD)/42分
監督:前田真二郎、鈴木光
撮影、録音:池田泰教、松島俊介
製作:H.584
提供:前田真二郎
1998年から国内外で「羊飼いプロジェクト」を続ける平面作家、井上信太。タクシーの運転手や理容室の店主によって語られる「都市」を彷徨い歩き、カートを転がしながら、顔のない「平面」の羊を放牧する羊飼い。はぐれた羊が人々に尋ねる「理想の場所」。静かなコミュニケーションを誘発しながら、スコア(制作設計図)に従った同一の構成によって、新宿と大垣それぞれの都市風景が奏でられてゆく。
【監督のことば】“新宿のアーカイブ”をテーマにした「トレジャー・シティ展」に参加したことが本作を構想するきっかけでした。都市を記録する方法を探ることを出発点に、劇映画における記録性に着目することになりました。例えば小津安二郎の劇映画『東京物語』を観ると、ドラマとしての面白さとは別に、当時の風景や生活様式を知ることができます。銀座や上野公園などの場面は貴重なドキュメンタリー映像といった側面があります。作者の意図を越えて時代の風景が映像メディアに記録されることは珍しいことではありません。そこで、そのことを事前に意識しながら制作する映画を思いつきました。都市の要素を抽出してそれらを時間軸に配置するスコア(設計図)を準備し、それを元に撮影を行うのです。YIDFF 1999に出品した『INOUE SHINTA PROJECT OF SHEPHERD 1999』は、 美術家の井上信太さんが1997年にドイツで開始した「羊飼いプロジェクト」のアート・ドキュメンタリーでした。今回の「羊飼い物語」はそれとは異なるシリーズです。少しややこしいのですが、今回、井上信太さんは「羊飼い」として出演しています。迷った一匹の羊を探しながら放牧を続けるという物語があります。そして、その物語の内容より重要なのは、都市の風景やそこに住む人々を記録することなのです。都市の多様な情報を記録しながら映画の時間を紡いで行く存在を思い浮かべたとき、「羊飼い」がまさにその役にぴったりだったのです。
前田真二郎 1969年生まれ。映像作家。京都精華大学大学院美術研究科修了。映像メディアを「未知を発見する道具」と捉え、コンピュータを用いた自動編集による映像作品や、規則をもとにした撮影行為による映画などを制作。現代美術や舞台表現といった他領域アーティストとのコラボレーションも少なくない。代表作に『オン』(2000、香港国際映画祭)、『日々 "hibi" 13 full moons』(YIDFF 2005)がある。2005年よりDVDレーベル“SOL CHORD”の監修を務める。2011年、指示書をもとに制作する即興映画“BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW”を企画。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)准教授。 鈴木光 1984年生まれ。映像作家。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了。現代美術の領域で映像作品を多数制作。主な作品として『ドラえもん』(群馬青年ビエンナーレ 2008)、『粉』(ART AWARD TOKYO 2008)、宗教家の父親をテーマとしたセルフ・ドキュメンタリー『GOD AND FATHER AND ME』(2010、第1回座・高円寺ドキュメンタリーフィルムフェスティバル)などがある。近年はマイクで人の話を収録することから作り始める映画を連作している。シネマ・ヴェリテの方法論を再解釈した短編映画『安楽島』(2011)が最新作で、現在はそれに続く映画を制作中。 |