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  • [タイ、オランダ]

    偽りの森

    Unreal Forest

    - タイ、オランダ/2010/ニャンジャ語、英語、タイ語/カラー、モノクロ/ Blu-ray(SD)/70分

    監督、脚本、編集:ジャカワーン・ニンタムロン
    共同脚本、共同監督:ホァン・ワトソン・ムトゥタ
    撮影:チャッチャイ・チャイヨント 
    製作:ピンパカ・トウィラ
    製作補:マイ・メークサワン 
    提供:Extra Virgin
    www.extravirginco.com

    病に冒された息子のために呼ばれたシャーマンが父子を森から滝へと誘う、「アフリカの森」を舞台にした神秘的な物語。タイ人である監督が脚本を書き、ザンビア人が監督した、この劇中劇のような物語と並行するメイキング。更にタイとザンビアに西欧人が到来した歴史に言及することで、やがてアジアとアフリカ大陸をつなぐ植民地の歴史を浮かび上がらせる。その製作構造と劇映画が融合した時、かつての帝国主義国オランダのロッテルダム映画祭の企画が、現代の文化植民地主義を映す鏡となる。



    【監督のことば】2009年のはじめ、私はロッテルダム国際映画祭のForget Africa projectに招待された。それは、世界各国から12人の映画作家を招き、アフリカを旅して映画を撮らせるという企画だ。私の映画『偽りの森』は、企画会議で好評だったことから、参加者や関係者の皆が賛成してくれて、12本の中で唯一の長編となった。

     2009年9月、私はスタッフと共にザンビアに渡った。それは、はるか遠く離れた大陸に暮らす人々の、まったく違う独自の視点に触れる旅だった。私を含めたほとんどのアジア人にとって、アフリカはまさに未知の世界だ。ザンビアの日常の一部となっている貧困、無秩序、不衛生な環境は西洋的ノウハウによって改善されるのを待っている、と私は感じた。

     私たちは今まで、植民地支配の時代は既に終わっていると信じていた。しかし現在、欧米による新しい文化帝国主義は全世界に広がっている。私を含めたタイ人は、植民地支配の長い歴史を持つ近隣諸国の人々に比べれば、被支配者という意識は薄いかもしれないが、それでもまったく支配を経験していないわけではない。欧米の勢力がタイの主権を脅かしたことは全くないと、どうして断言できるだろうか。

     私はこの映画で、植民地支配の新しい姿を描きたかった。そこでは、新時代のテクノロジーとコミュニケーションが、支配の主力になっている。また、アフリカとアジアという2つの大陸の関係を、類似した古の民俗誌を通して探ることで、文化的不平等が進行する複雑な状況に直面する私たち自身の文化に立ち返ることができればとも考えている。


    - ジャカワーン・ニンタムロン

    2000年にバンコクのシラパコーン大学の絵画・彫刻・グラフィックアート学部を卒業した後、シカゴ美術館付属美術大学で映画制作を学ぶ。『Dripping』(2004)はバンコクのタイ短編映画・ビデオ映画祭で入賞した。ヒンドゥー教の神の再生についての実験的な物語を描いた卒業制作『Patterns of Transcendence』(2006)は数々の映画祭で上映された。

    2006年にシカゴ美術館付属美術大学の美術修士号奨学生となり、2007年にはアムステルダム国立美術学校のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに選ばれた。

    短編映画『A Voyage of Foreteller』(2007)はオーバーハウゼン国際短編映画祭などで上映され、現在同名の長編映画の準備をしている。最新の短編映画に『Orchestra』(2008)と『Man and Gravity』(2009)。本作は初の長編映画となる。