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ニュー・ドックス・ジャパン



 東京に住んでいると、日本ドキュメンタリー作品の上映が飛躍的に多くなってきている実感がある。しかしウェブ上で公開されているデータベースで調べると、年間公開本数はここ数年で50本前後のまま動きがない。そこには自主上映や、1週間未満の公開作品は含まれていないからだ。つまり日本ドキュメンタリー界は地下で蠢いていて、その変化を感じるには、足を運んで実感するより他はない。自主上映会のみならず、ドキュメンタリーを上映するミニシアターの数は確実に増えている。さらに今年は、インターナショナル・コンペティションで上映する『監督失格』がシネコンで公開されるなど、日本のドキュメンタリー作品を上映・鑑賞する裾野は確実に広がっているのではないだろうか。

 今回上映する、社会の矛盾や理不尽に向き合う8作品のタイトルには、生きる、ここにおる、さようなら、人、返せ!など、断定的な言葉が並ぶ。タイトルを考えたのは、日本社会のシステムから「外れている」と見なされた人々の物語を発見し、物語を紡ぐことを引き受けた作家たちである。ひとり(または少人数)で撮影、編集し、上映の場を設けながら、タイトルで想いを宣言する彼/彼女たち。その物語を通して、スクリーンにそれぞれの宣言が刻まれる瞬間を、会場に足を運んで見届けていただきたい。そして上映環境をめぐる変化の波に乗って、広く上映、公開されてほしい。

 また2本のオムニバスに集結した個人作家たちは、3.11以降の日本の風景を映し出しながら、しかし軽やかに映像の魔力を讃えている。一方は8ミリフィルム作品群、もう一方は共通の形式で制作された短編をウェブ公開と、作品を生み出すメディアは対極をなす。現在進行形で常に変化しつづける、それぞれの試みに舌鼓あれ。

馬渕愛