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アジア千波万波
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    Gift

    - 日本/2011/日本語/カラー、モノクロ/Blu-ray(SD)/40分

    監督、脚本、撮影、編集:奥間勝也
    助監督:山本和生、友寄隆平
    録音:友寄隆平
    出演:我那覇耀丞、亀川勉、大田和人、崎山力、櫻井志乃
    提供:奥間勝也

    祖父を亡くした少年ヨウスケは、ある日、墓地で亀ちゃんという初老の男と出会う。亀ちゃんのついた小さなウソを信じてしまうヨウスケ。そんな2人を見守るのはアメラジアンの男。伝統文化として継承されてきた墓地が、那覇市若狭地区の再開発工事によって取り壊されることをきっかけに、「映画」を作る行為を通じて、物語の虚構を解体する試みが繰り広げられる。



    【監督のことば】着想の段階で念頭にあったことは「継承する」ということはどういうことなのか、という疑問だった。沖縄では、トートーメー(沖縄式仏壇)や墓を「継承する」ことの重要性が言い伝えられ、沖縄文化における善きものとされてきた。僕もその大切さは理解しているつもりだ。しかし、それが逆に圧力となって人々を苦しめてきたことも、もうひとつの真実だと思う。血統による「継承」は、ともすれば、人を排除することにもなりうる。だから僕はもっと違った形での「継承」を、血統に縛られることのない、いわば「外へ開かれた継承」とも言うべきものはないのか、ということを問いながら物語を書くことにした。

     一方で僕の家の近くで道路拡張工事が行われていることに気づいた。どうやら大型フェリーの停泊港と沈埋トンネルの建設が連動して、国際通りまでの観光ルートの一部になるらしい。道路拡張のために、その一部が取り壊されてしまう公園には、僕の友人である「亀ちゃん」が住んでいる。それと時を同じくして、僕の祖母方の墓が取り壊され、そこに新しい公園ができるかもしれない、ということを耳にした。その墓は国際通りのすぐ裏手にひっそりと、けれども、ただならぬ空気を纏いながら建っている。

     過渡期の街と、「亀ちゃん」と、この街を継いでいくかもしれない「ヨウスケ」。この3人の主人公に、僕の想いを好き勝手にぶつけてみた。本作は僕の欲望と3人の共犯者がでっち上げた、嘘の物語だ。本来ならば、これは嘘の物語であるはずなのだ。


    - 奥間勝也

    1984年、沖縄県那覇市生まれ。 これまでに2本の自主映画を監督。その他の活動としては、山本政志監督『スリー☆ポイント』沖縄編の撮影、助監督や沖縄の若手アーティストや批評家が立ち上げた雑誌「las barcas」 に参加している。本作は2011年3月に沖縄県立美術館支援会が主催した「オキナワ・ アート・アクション」において制作、上映したものである。