アジア千波万波 |
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アジア千波万波 特別招待作品 審査員 |
ソレイユのこどもたち
Children of Soleil-
日本/2011/日本語/カラー/Blu-ray(SD)/107分
監督、撮影、録音、編集、提供:奥谷洋一郎
東京、多摩川の河口で、モーターボートの修理をしながら船で暮らしている男。いつも犬を傍らに、川岸でホームレスや近所のオッサンたちと語らう。そして時折カメラを向けて撮影している作者に話しかける。作者は彼をじっと見つめ、ただただ見ること聞くことに徹する。そこには「映画」を作ろうという強い意志が感じられる。
【監督のことば】野良犬を探してた。東京をモチーフにした映画を撮るために。小学生のころに教室の窓からぼんやり外を眺めていた時のこと、ふいに野良犬が校庭に迷い込み、教室にいた私たちは大騒ぎになった。いま東京で野良犬を見かけない。海に浮かぶ空港の滑走路に野良犬が迷い込んだと聞きつけ、私は東京湾に流れ出る多摩川の河口の街へ向かった。そこで出会った人たち。漁師は、もうとっくにこの海の漁業権は放棄してしまったと言った。産業廃棄物処理場を営む在日朝鮮人は、ゴミは宝の山だと言った。空き缶を集めるため自転車で走り回っていたホームレスは、いまは1キロあたり105円だと言った。彼らが騒ぎになった犬たちの飼い主を教えてくれた。その男は、船に住み犬を飼いながらモーターボートを集めて修理をし暮らしていた。彼は船の修理代の代わりに漁師からもらった、売り物にならない魚を捌いて私にごちそうしてくれた。捨てる者、拾う者。私たちはみな都市に住みつく犬。雑種で野良。そしてこの東京に生きている。
奥谷洋一郎 1978年、岐阜県中津川市生まれ。東京育ち。慶應義塾大学文学部卒業。映画美学校ドキュメンタリー・コース研究科修了。映画作家、佐藤真、筒井武文に師事。本作は佐藤真の遺した企画、ドキュメンタリー映画『トウキョウ』の一編として発想し制作された。現在は、複数の作家によるマルチプロジェクション企画「Documentary Tokyo」を進行中。他に、見世物小屋一座との10年に渡る交流のなかで生まれた作品『ニッポンの、みせものやさん』(2001−2010)がある。 |