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シマ/島、いま――キューバから・が・に・を 見る


キューバは廻る

サンティアゴ・アルバレス

サラ・ゴメス

ニコラス・ギジェン・ランドリアン

Another Eye

移民の島

フェルナンド・ペレス

永遠のハバナに続いて


 〈さまよえる映画たち〉とサブタイトルを題した2009年の「シマ/島」特集の後の12月、ハバナの新ラテンアメリカ映画祭に赴く。キューバ革命から10年後の1969年にスタートしたこの映画祭は、革命から50年目を迎えたその年、主にイベロアメリカからの参加者で活況を見せていた。その社会的背景による物資不足や経済困窮により、映画祭運営は年々財政難続きと聞いていたが、映画への熱情が引きつける行き交いは世界中のどこも変わらない。むしろ、〈ここ〉で見られること、見ることへの渇望と交流への希求は、なかでも鮮明だった。


 映画によって自身というシマ/島を表現する、映画を作ることで自分のシマ/島を作る、シマ/島で映画を作ること。それは地理的な島としてだけでなく、各人、各映画が、自身のあるかたちを思考する創造の場としてのシマ。さまざまな面で転換期を迎えているキューバが「シマ/島」に連なる島影となって顕れてきた。

 ラテンアメリカはもとより世界から注目され異彩を放つ島、キューバは、ラテンアメリカという括りを確実に結びつけてきた磁石として、政治的に文化的にさまざまな意味で〈求心地〉である。ラテンアメリカに色濃い影響を与え/与えられてきたキューバにおける映画という営みは、〈国家〉や〈主義〉とどのように切り結んできたのか。新キューバ映画の起点となるキューバ映画芸術産業庁(ICAIC)が創設された1959年を基点に、異才の作家たちと現代に続く作家たちの模索、そこに交わる視点や人々の行き交いに着目する。


 再びキューバを訪れている最中に、東日本大震災が起こる。つい安易にキューバの現在こそ、いまの日本が学ぶことだと帰結してしまいそうになるけれども、より深く長い海路が私たちの前には広がっている。まるで、悠然と島の眼前にひろがる海のような。海は、時に穏やかに、時に荒く、無限の変容を繰り返す。ヤマガタの波間に連なるシマ/島に表れる情熱と機知の漲る作品群とそこにひろがる海に魅せられることを。

 本プログラムに様々な形で多くの方々のご尽力とご協力を得ました。ここに心より感謝を記します。

濱治佳