アジア千波万波 |
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アジア千波万波 特別招待作品 審査員 |
髪を切るように
A Trip to the Barbershop-
デンマーク、レバノン/2010/アラビア語、英語、デンマーク語/ カラー、モノクロ/Blu-ray(SD)/23分
監督、脚本、撮影:サリーム・ムラード
編集:ミラ・ブトゥロス、サリーム・ムラード
音響:アラン・ドゥニオ
製作、提供:デンマーク国立映画学校
ロアンヌにいる彼氏への携帯メール、ベイルートにいる両親との日常会話、そして僕はコペンハーゲンで生活していた。故郷ベイルートを慈しみながら、つかの間のコペンハーゲンでの生活を日記のように映像にとどめ、異郷の地で感じる孤独、愛する者たちと過ごした時間を綴るラブレター。レバノンとデンマーク出身の監督が互いの国で映画を作るというデンマーク国立映画学校によるプロジェクトの1本。
【監督のことば】時に、この作品について語るのは難しい。今までにない体験だったから。制作過程がまず特殊だった。私は2人のレバノン人映像作家と共に、知らない街に身を置きながら、映画を撮ることになった。その体験に圧倒された私は、私的で独創的なドキュメンタリーが撮れると確信した。故郷とは全く違う未知の地に足を踏み入れることで、とても強い感情が呼び起こされたからだ。加えて当時の私は、とても大切な恋のただ中にいた。
私は映画のナラティブ形式やインタビューを撮影することには関心がなかった。この映画で目指したのは、音と映像を通して一編の詩を書くことだった。街を描写した詩、あるいは少し謙虚に言えば、コペンハーゲンという街を私なりに解釈した詩を綴りながら、私の悲しみと故郷を思う気持ちを重ねていくこと。だから私は、「ペン」としてのカメラを手に街を歩き、目に留まったもの全てを書き記していった。たまたま流れていた音楽を録り、その時々に浮かんだ考えを記録した。映画を作る流れにまかせ、また、ひとつの愛にピリオドを打つためにも、私はフランスへと向かうことになった。床屋に行って髪を切るように、それは内面と外面の両方を見直すプロセスだった。
同じような体験をくり返すことはできないのかもしれない。なぜなら、二度目は既に経験したことであり、一度目は常に初めての体験だから。この作品を撮ったことによって、私が目指す映画の形に一歩近づけたと思う。
サリーム・ムラード 1987年、レバノン生まれ。ベイルートのカトリック系の学校であるサクレクール大学ジェマイゼ校を卒業後、医学校に少しの間通うが、自分の本当の夢ではないことを悟りベイルートのセントジョセフ大学のIESAV(パフォーミングアーツ・映像・映画研究機関)で映像と映画の勉強を始めた。作品に『Letter to My Sister』(2008)などの短編ドキュメンタリーや、『+』(2010)、『Pouldreuzic』(2011)、『75 Rue St Michel』(2011)などの監督自身の個人的な日常生活をフィクションに転用した中編映画がある。現在はベイルートで修士課題の映画制作の傍ら、中学校で映画を教え、時折アラブ系テレビ局の短編ドキュメンタリーを撮影している。 |