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アジア千波万波
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  • 仲里効
  • 審査員
    仲里効


    -●審査員のことば

     4年前の本映画祭スペシャルプログラムとしての沖縄特集「琉球電影列伝/境界のワンダーランド」に関わらせてもらったことがある。沖縄をめぐって撮られた映像の集積から最終的に70本余を選び、映画祭期間中3つの会場で上映した。朝も昼も夜も映画に浸かりきった。そしてその約1カ月後、台湾、中国、韓国、フィリピンなど、その年のアジア千波万波の受賞作や上映作品を加え、沖縄に移動し上映した。この試みは、アジアと日本の境界・沖縄という場で、アジアの複数のまなざしが絡まり、重なり合う様相を体験することにもなった。まさに〈境界のワンダーランド〉となった。

     一口に「アジア」といってもその実質は多様であるはずだ。ひとくくりにできないことはいうまでもないが、しかし、作り手たちがフィルムを通してそこに書き込んでいく内容には、それぞれの土地土地のかつてといま、あるいは過ぎ去ったこととけっして過ぎ去らないことが相互に浸入し合う時の、葛藤や軋みや呟きなどが陰翳のように描きこまれてもいるはずだ。

     アジアの地峡や海峡に裂線のごとく走り、まわりこむものがある。グローバルな力の波は、大陸の奥地から半島をめぐり、群島を転綴しながら人々の営みや風景を洗う。作家たちはその波と戯れ、抗いながらドキュメンタリーの文体を産出していく。それぞれの現在と基底、あるいは境界領域を横断しながら、そこに光と影、響きと怒り、呟きと沈黙のフォルムを織り上げていくのだろう。

     何の用意もなく私はじかに作品と接する。作品はただ作品そのものの力だけで世界と向き合い、そこにある独特な対話のカタチを提示する。いや、〈それ〉はきっと不意打ちのようにやってくるのかもしれない。予想を越え、越えることによって視る者の眼のパラダイムを新しくするとともに、人の生と死を深みへと誘ってくれるはずだ。映画から現実へ、現実から映画へ、その結界に立ち会えること、いくつものアジアに出会えること、映画はいつだって世界体験の不思議そのもののようである。千の波、万の波から今年の〈それ〉はどのようにやってくるのだろうか。


    1947年生まれ。『EDGE』編集長。活字と映像(写真、映画)から沖縄の境界性、エッジとしての沖縄を試みる。『オキナワン・ビート』(ボーダーインク社)、『ラウンド・ボーダー』(APO)、『沖縄の記憶/日本の歴史』(共著、未來社)、映画『夢幻琉球・つるヘンリー』(1998、共同脚本、高嶺剛監督)、映像展「丘の上のイエスタデイズ」等。YIDFF 2003の沖縄特集「琉球電影列伝/境界のワンダーランド」コーディネーター。2007年には『オキナワ、イメージの縁(エッジ)』(未來社)、『「沖縄問題」とは何か――対論』(共著、弦書房)が出版された。

     

     


    アジア千波万波 スペシャル企画


    トーク&上映 クイアを謳(うた)

    日時:10月6日[土]18:45 会場:Muse 2 【入場無料】

    ラップとレズビアン、はたまたクイア(映画)と切っても切れない歌の関係を上映も交えて解き明かす。なぜ歌う?! WOM(『OUT』 監督)、“歌って踊れるレズ”さときん(『wrap! rap! -10cs3-』監督、主演)他登場、上映予定。



    中国ドキュメンタリーを話そう

    日時:10月7日[日]19:30 会場:Muse 2 【入場無料】

    中国ドキュメンタリーは表現のメルティング・ポット。作り手を支える上映運動から、当地の状況を知ろう。北京で上映・製作活動を行う朱日坤(ジュー・リークン)、批評家の張亜璇(チャン・ヤーシュエン)、YIDFF 2005の「雲南映像フォーラム」で来形した郭浄(グオ・ジン)、楊昆(ヤン・クン)、易思成(イー・スチャン)の各氏と、YIDFF 2007参加の作家が登場予定。



    トーク&トーク 『島伝いに』

    日時:10月9日[火]16:30 会場:Muse 2 【入場無料】

    映画に込められた島の身体性を巡りめくるお話を、仲里効(沖縄/アジア千波万波審査員)、キドラット・タヒミック(フィリピン/インターナショナル・コンペティション審査員)らとともに編み出そう!