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    ビショル・ブルース

    Bishar Blues

    - インド/2006/ベンガル語/カラー/ビデオ/80分

    監督、製作:アミターブ・チャクラボルティー
    撮影:ショモク・ムケルジ
    編集:アミターブ・チャクラボルティー、オミト・デブナト
    録音:パルト・ボルモン
    リサーチ:シュロジト・シェーン
    提供:アミターブ・チャクラボルティー

    東インドのベンガルに住む自由にイスラム教を実践する修行僧(フォキル)。吟遊詩人でもあるフォキルの歌に編まれる厚い信仰。中央アジアを通じてベンガルに辿り着いたその歌はバイオリン、打楽器、笛、そして琴線を振るう歌声で人々を高揚させ、自己を知ることが神を知ることだという教えが込められている。多様な文化が混合するこの国で、アウトサイダーなイスラム教徒フォキルとの出会いの旅。豊かな祈りの瞬間に立ち会い、異端(ビショル)のブルースと共に境地(マルフォト)を追い求めるロードムービー。



    【監督のことば】現代の世界を見渡すと、イスラムの悲惨なイメージで息が詰まりそうになる。9.11のニューヨークのツインタワー爆撃、アフガン爆撃、イラク爆撃、ロンドン地下鉄爆撃、ムンバイ列車爆撃、オサマ・ビン・ラディン、厳格で非民主的な神学者……。純粋にイスラムの教えを信じている、1人ひとりの個人はどこへ行ってしまったのか?

     私は偶然、ベンガルでフォキルと呼ばれる当地の吟遊詩人に出会った。そして、考えさせられた。

     『ビショル・ブルース』は、マルフォトの道をたどるイスラム教徒のフォキルの後について、西ベンガルの農村地帯を旅していく。イスラム世界では、イスラム法が現実の社会と倫理を支配している……。マルフォトは、隠された智恵だ。その目的は、苦行によって自分自身を肉体から解放すること。

     すべてのフォキルが、アラー、預言者ムハンマド、コーランを信じている。しかしそれぞれが、アラー、ムハンマド、コーランを自由に解釈し、その三者の関係についても独自の考えを持っている。いかなるイスラムの中央権力の承認も受けずに、様々な物語を持つイスラム神話を作っている。フォキルそれぞれが、物語にひねりを加える。物語の種類は限りなくあり、そのことから、もしかしたら人間自体が究極の神話かもしれないという思いにいたる。自分を知ることは、神を知ることなのだ。

     私はフォキルたちの中に、自分の運命をすべてその手に握っている個人の姿を見た。システムは、都合によって変えられる。それぞれの個人が膨大な変数を作りだし、システムを制約しない。フォキルはイスラム教を閉じ込めない。私も、彼らと運命を共にした。私は映画を作った。。


    - アミターブ・チャクラボルティー

    1959年、インドに生まれる。政治学の学士号を持つ。プネーのインド映画・テレビ学院の大学院で映画編集を学ぶ。製作、監督した長編『Kaal Abhirati』(1990)はインド・フィルム・アワード(ニューデリー)で審査員特別賞を受賞。他の作品は『Kitsch-Mitsch』(1996)など。監督と共同製作を務める長編ドキュメンタリー『Cosmic Sex--A Dialogue with Gandhi』を、現在製作中。