審査員
ビョン・ヨンジュ
●審査員のことば
何よりも、久しぶりに山形を訪れることになり、とても幸せな気持ちです。
アジアの多くの若い監督と同じように、私も山形でドキュメンタリー映画の作り方を学びました。ドキュメンタリーだけでなく、劇映画を作っている現在も、山形は私にとって、卒業証書を受け取った映画学校であり、私の映画のひとつの出発点です。まさにその場所で、アジアの監督たちの新しい作品に触れることができ、なおさら幸せです。
映画というのはとどのつまり、監督が心から愛する人に送る永遠のメッセージなのだということを、「アジア千波万波」の賞の名称にもなっている小川紳介監督の映画を見て知りました。そのような意味で、2007年の今、もっとも真摯な映画を審査することになり、改めて光栄に思っています。
1966年生まれ。梨花(イファ)女子大学校法学科卒業、中央(チュンアン)大学校映画科修士課程修了。女性映画製作集団バリトを立ち上げ、『私たちの子どもたち』(1990)、『戦列』(1991)をYIDFF '91で上映。YIDFF '93では『アジアの女として』(1993)を上映。元「従軍慰安婦」のサバイバーたちを描いたドキュメンタリー映画『ナヌムの家』(1995)は、YIDFF '95小川紳介賞を受賞し、続けて『ナヌムの家 II 』(1997、YIDFF '97招待作品、98年ベルリン国際映画祭正式出品)、『息づかい』(YIDFF '99「ワールド・スペシャル・プログラム」)を製作。その後、劇映画『密愛』(2002)、『僕らのバレエ教室』(2004)を製作。現在は、宮部みゆきの原作で次回作の脚本を準備中(2008年夏完成予定)。 |
息づかい
My Own Breathing숨결
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韓国/1999/韓国語/カラー/35mm(1:1.33)/77分/日本語字幕版
監督:ビョン・ヨンジュ
撮影:ビョン・ヨンジュ、ハン・ジョング
編集:パク・コクチ
録音:キム・ウニョン
製作:シン・ヘウン
製作会社:ドキュ・ファクトリー・ヴィスタ
提供、配給(日本国内):パンドラ
『ナヌムの家』、『ナヌムの家 II 』で一貫して、日本軍に「慰安婦」にされたサバイバーたちの共同体を描き続けてきたビョン・ヨンジュ監督。三部作最後の本作が製作されるまでの過程で、何人もの女性が亡くなった。彼女たちを哀悼し、残された女性たち、そして彼女たちを見つめ続けた監督が過去と現在をつなげるロードムービー。16歳で日本軍に台湾へ連れ去られたイ・ヨンスさんが、他の被害女性たちを訪ね、出会いを重ねる旅をカメラが記録し、次第に13歳の時、中国へ連れ去られたキム・ユンシムさんと監督との対話に引き継がれる。日記を出版するという形で世に知られたキムさんと娘にカメラと監督が介在した時、現在と過去を断絶するサバイバーたちの生きている同時代の社会が立ち現れる。それは見ている人たちそれぞれの現在を、ふと、不安に陥れる。