秉愛(ビンアイ)
Bingai秉爱
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中国/2007/中国語/カラー/ビデオ/114分
監督、撮影、製作:馮艶(フォン・イェン)
編集:馮艶、マチュー・エスレール
アソシエイト・プロデューサー:張亜(チャン・ヤーシュエン)
提供:馮艶
現在建設中の三峡ダムが完成することによって移住させられる113万人の多くは農民。そのひとり、気概あふれる秉愛(ビンアイ)の7年間にカメラが寄り添う。移住を推し進めようとする役人と烈しく渡り合う姿とは対照的に、時に土を耕しながら時にろうそくの火に灯されながら語る不安、そして家族や結婚について話す時に見せる繊細な横顔。秉愛の心の機微を監督は粘り強く見つめ、可憐な素顔を引き出し、そこに残ろうと彼女を駆り立てる土地に対する慈しみを掬い出す。
【監督のことば】 張秉愛は私がこれまでに出会った撮影対象の中で最も“予熱期間”が長い人だった。彼女が身の上話を打ち明けてくれたのは、知り合って8年経った後である。もうすぐ上がってくる水で家が沈み、最後の決断をしなければならないという大きな圧力を背負った時、過去の苦しい生活の思い出が堰を切った洪水のようにあふれでてきたのだ。私はこの潮衝に巻き込まれて流され、思うままに身動きができず、どこかでかつて聞いたことのあるような話に包まれて、相手の魂に触れた思いがし、一瞬の戦慄すら覚えた。秉愛が忙しい農作業の間で、政府役人との激しい交渉の合間を縫って、カメラに向かってよどみなく話しかけてくる時、彼女の選択とこれまでの行動は、すべて彼女自身の人生経験によるものだと理解した。『秉愛』を仕上げてみると、彼女の話と現実の中で起きた“事件”とのクロスオーバーは、撮影の順序と完全に合致していると気がついた。生活は私たちの想像を遥かに超えるほど繁雑で豊かなものである。この偶然の一致で、私は映画を“構成”しようとする自分の努力が愚かで余計なものだと、ただただ嘆くばかりであった。
馮艶(フォン・イェン) 生粋の天津人。1988年から13年間日本に滞在する前、天津の大学で日本文学を学ぶ。1994年からドキュメンタリー製作を開始。初の長編作品『長江の夢』(1997)はYIDFF '97アジア千波万波、第22回香港国際映画祭、1998年第1回台湾国際ドキュメンタリー祭(優秀記録賞)などで上映された。本作『秉愛』は2007年第4回中国ドキュメンタリー映画祭で優秀記録賞を受賞した。 |