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ドラマティック・サイエンス! 〜やまがた科学劇場〜


A program 科学という芸術:ジャン・パンルヴェの愉快な世界

B program サイエンスの胎動:ドイツ・ウーファ社文化映画選

C program 生命(いのち)のコスモロジスト:樋口源一郎の100年

D program 日本傑作選1:見る・知る・わかる!

E program 日本傑作選2:天然の美

F program 日本傑作選3:生きものの記録

G program 日本傑作選4:宇宙大作戦!

H program 日本傑作選5:身の回りの科学


イントロダクション:「発見するよろこび 〜科学映画への招待〜」

 「科学映画」と聞くだけで、真面目で堅苦しい、なんだかお勉強をさせられそうな映画だと思う人が多いかも知れません。実は私も5年前まではそうでした。ある日たまたま『潤滑油』(1960)という、あまり楽しくなさそうな題名の映画を見るまでは……。巻頭いきなり怪獣映画のように重厚な音楽が始まり、色鮮やかな油膜がゆらゆらと舞い始めたのに思わず身を乗り出すと、スクリーンでは現代社会のあらゆる場所で「摩擦と戦う」ヒーロー・潤滑油が活躍し始めたのです! それ以来、科学映画もまた「森羅万象が主役のドラマ」だと考えれば、楽しめる作品がたくさんあることに気がつきました。自然の神秘・生命のメカニズム・果てしない宇宙……数々の不思議に挑んだ科学者および映画作家がフィルムに焼き付けた、目を見張る映像美や息を呑むスペクタクル、そして感動を呼ぶ展開を、もっと多くのお客さまに楽しんでいただきたいと考えて、科学映画好きの仲間たちが集まって企画したのがこの「ドラマティック・サイエンス! 〜やまがた科学劇場〜」です。

 そもそも「科学映画」とは何か? 〈科学的なテーマを扱った映画〉と定義すると、学術的な研究記録映画から学校向けの理科教材映画、企業がPRを目的に出資した産業技術映画、さらには科学的なテーマを扱った劇映画までもが浮かび上がります。登場するのは微生物から宇宙のブラックホールまで多種多様、さらに極論すれば映像という仕組みそのものさえ科学的なテーマとなり得るのですから、「すべての映画は科学映画である」と言い張ることもできそうです……。

 では「科学映画」の醍醐味とは? 山形県天童市に生まれた樋口源一郎監督が95歳で新作『きのこの世界』(2001)を完成させた際に、「新しいものを見つける面白みを伝えたいような気持ちで、映画も作っている(だから疲れないでこの齢までやっているのかも)」と仰ったように、科学映画を見る楽しみもまた、新しい何かを「発見するよろこび」ではないかと思います。ジャン・パンルヴェはタツノオトシゴやコウモリに愛着を抱き、あたかも友だちを紹介するような気さくさで彼らの生活を見せてくれますし、ウーファ社の野心的なスタッフは高い技術力と情熱で「今まで見たことのない世界」を映し出すことに貪欲にチャレンジしています。日本の作品は戦前の『蝉の一生』『黒い太陽』から、21世紀生まれの『3万kmの瞳』『胃 ―巧妙な消化のしくみ―』まで、70年にわたる歴史を駆け足で見ていくプログラムを組みましたが、時代背景も製作動機も想定された観客も異なる作品を一緒に見てみると、どの作品も新鮮な「発見」で輝いていることに気づくことでしょう。観客に新しい事実や現象、考え方を提示してくれる作品、作り手も受け手も「発見するよろこび」を味わえる映画たちを、ご一緒に楽しんでみませんか?

清水浩之