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    雲の彼方に

    Somewhere over the Cloud
    雲的那端

    - 台湾/2007/中国語、フランス語/カラー/ビデオ/102分

    監督、撮影、編集、製作:蕭美玲(シャオ・メイリン)
    編集アシスタント:黄瑋玲(ホァン・ウェイリン)
    音楽:黄海鳴(ホァン・ハイミン)
    助手:王豔媜(ワン・イェンジェン)
    提供:蕭美玲

    監督の娘エロディにとって、「パパ」はウェブカムを通じて交流するヴァーチャルな人。国境のない小さな画面の世界で築こうとするふたりの関係。その時空を越え交錯する関係に母として作家として監督はカメラを持つ。天真爛漫な娘の様子、台湾とフランスの往来、大切な祖母の死、混沌とした政治状況が続く台湾への想い、成長するにしたがって変わってくるエロディにとっての「パパ」の意味とは。監督の師である故ロバート・クレイマーにあてた手紙に娘の視点を織り込み、作品作りと娘への尽きせぬ想い、人生や距離、アイデンティティ、国籍を縦横無尽に取り込み漂う家族を描く。



    【監督のことば】インターネットは、実体がなく、絶え間なく拡がり縮まる雲のようだ。1分間、1時間が永遠になる。

     ロバート・クレイマーはこの世を去ったが、彼のメールアドレスは永遠に彼が存在する精神的な空間だ。ル・フレノワで、ドキュメンタリー作りへと、彼は私を導いてくれた。私は死よりも遠く、ネットワークのはるか向こうの雲の彼方で、彼とのつながりを持ち続ける。

     前作『落ちて行く凧』では、糸の切れた凧が、国を離れた人々への別離と郷愁を呼び起こした。国籍の違う両親を持つ娘、エロディの存在によって、私は、文化、国家、政治のレベルでのアイデンティティの問題に対峙することになる。インターネットは自由の空間、パーソナルであると同時に、公共の場所でもある……リアルであると同時にヴァーチャル……すぐ目の前であると同時に異質……そして過去、現在、未来を覆う……。しかし、インターネットは新しい形の家族の絆を作ることができるのだろうか? ヴァーチャルな愛は可能なのか? 21世紀になっても、人々は国境やアイデンティティの違いによる制約を感じるのだろうか? 21世紀のテクノロジーは、国を離れた人々への郷愁に終わりを告げるのか? 私は、母親からただ対象を写すだけのカメラになることで、それらの問題を尋ね、答えを待つのだ。


    - 蕭美玲(シャオ・メイリン)

    1964年、台湾の基隆生まれ。1989年に国立台北芸術大学の美術学部を卒業。その後、フランスに渡り、1994年ナンシー国立美術学校入学、1998年に優等で卒業。同年、ル・フレノワ国立現代アートスタジオに入学し、ロバート・クレイマーに師事。その後、現代美術とドキュメンタリー映画に向かう。YIDFF 2001のアジア千波万波で上映した『落ちて行く凧』(1999)をはじめ、シネマ・デュ・レール、ルサス、ライプツィヒ、バンディ・マージュなど多数の映画祭、マルチメディア芸術祭に参加。2004年には台湾の国家文化芸術基金から『雲の彼方に』の資金援助を受ける。現在、国立台北教育大学芸術学部で教鞭を執る。パリでも現代美術とドキュメンタリー映画の仕事を続けるため、パリと台北を行き来している。