ふるう
Sift-
アメリカ、カタール/2006/英語、アラビア語/カラー/ビデオ/10分
監督、脚本、撮影、製作:サリー・ヴァンゴーダー
編集:サリー・ヴァンゴーダー、ジョー・ウィルソン
録音:サリー・ヴァンゴーダー、ウィリー・エリアス、ジョー・ウィルソン、アーロン・キーン
音楽:ルブナ・アル・イーサー 提供:サリー・ヴァンゴーダー
まだその全貌が完成されていないドーハ郊外に拡大中の巨大学園都市には、アメリカなど海外からも著名な大学群のカタールキャンパスが集まる。続々と建設される西洋建築物の鉄骨には砂漠の直射日光がさし、まるで焦点が合わせられない。水面と風と影に重なる言葉の音の粒子が熱風に揺れながら流されてくる。この地の様々な変化のスピードと肌触りを学園都市の15人の女性が英語で発する言葉の断片を運転するようにつなぎ合わせる。カタールの西洋的な郊外化された都市のざわめきを体現するように、ここからどこかへと鳥たちがはばたいていく。
【監督のことば】2002年の秋、私はカタールのドーハに引っ越した。その地にあるヴァージニア・コモンウェルス大学の芸術学部で教えるためだ。私が滞在した最初の1年で、カタールでは女性が選挙権と被選挙権を獲得し、国で最初の憲法が成立し、初の女性市議会議員が生まれ、そしてモーザ・ナーセル・アル=ミスナド妃殿下が、ベールをかぶらずにメディアの前でスピーチをして国民を大いに驚かせた。当時65万人だった人口は、年に4万人のペースで増えていた。ドーハの旧市街は取り壊され、煉瓦の過去から鉄とガラスの未来へと急速に変化した。
当時のカタール社会は外の人間を受け入れず、内部の慣習を伺い知ることはできなかったが、それでも私は、目に映るものの多くに親近感を覚えていた。私の生徒は全員イスラム教徒の女性で、女性なら誰でも共感できるであろう複雑で矛盾に満ちた社会の中を苦労しながら進んでいた。私自身も保守的で、キリスト教の伝統を重んじる軍人の家庭で育った。体面と名誉を何よりも重んじる保守的な環境は、ドーハでの生活とどこか似通っていた。
『ふるう』は、15人の湾岸地域に住む若いアラブ女性の生活を映しだし、彼女たちと共に、この場所が急速にそのアイデンティティを獲得する様子を描こうとした。また、カタールで映画を撮ることの文化や環境などによる様々な困難、それらが、この国の複雑さと、国と女性たちに開かれた可能性がもたらす興奮を浮き彫りにしている。
サリー・ヴァンゴーダー ビデオ、写真、サウンド、インスタレーション、プリント・メイキングなど多方面で活躍するアーティスト。親密な自分との対話を露呈させるというアプローチ、アーティストの手が加えられた証拠を強調するというテクニックを用いて、観る者を作品主体と直接結びつける。その作品は、ノースカロライナ美術館、デューク大学美術館、ウクライナ現代美術館、サウスイースタン現代美術センター(ノースカロライナ)で展示され、アナーバー映画祭、DOXAドキュメンタリー映画祭、ワン・リール映画祭(シアトル)等の映画祭で上映される。多数の賞、表彰、資金援助を受け、「New Art Examiner」誌、「Art Papers」誌で紹介される。世界各国を旅し、アメリカ、ヨーロッパ、中東で暮らした経験がある。カタールのドーハにあるヴァージニア・コモンウェルス大学カタール校芸術学部でグラフィックデザインの助教授を4年間務め、最近アメリカに帰国。 |