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    バックドロップ・クルディスタン

    Back Drop Kurdistan

    - 日本、トルコ、ニュージーランド/2007/日本語、トルコ語、英語/カラー/ビデオ/115分

    監督:野本大
    撮影:野本大、山内大堂、大澤一生
    編集、製作:大澤一生
    提供:BDK製作委員会 大澤一生

    難民認定を求めて必死に国連大学前に泊まり込み、デモや署名活動を行う「難民」としてトルコから日本にやってきたクルド人カザンキラン一家。認定を勝ち取るも、やがて強制送還されてしまう父子の現実を目の当たりにし、やり場のない怒りと疑問を払拭すべく「傍観者」であった監督が一家の背景を追ってトルコへ飛ぶ。現地で人々に話しかけながら、「トルコ」と「クルド」の関係やクルド難民について体当たりの思考がかけ巡り、「クルド問題」というニュースから離れたトルコ内の「クルド」というアイデンティティの異相を浮かび上がらせる。瑞々しい感覚が呼び起こす個人と社会、国家へのバックドロップ。



    【監督のことば】難民のことも、クルド人のことも、本当に何も知らなかった。

    カザンキラン一家に出会わなければ、今も何も知らないままだったかもしれない。

    炎天下の中、72日間必死で訴え続ける姿。不安定な生活状況。やがて、強制送還されてしまう家族。僕は、自分が無知であるということに、ずっと逃げ続けていた。それを家族に気づかされた。

    「知りたい」と思っても、けっして同じ土俵に立てるわけではないが、少しでも近づきたいという気持ちだけで撮影を続けた。

    結果的にそれは、クルド人のこと、難民のこと……色々なことを学ぶと同時に、自分のスタンスを考えるキッカケになった。

    単純なことで、知らなければ何もできない。無関心で、傍観者でいることが、知らぬ間に人を傷つけてしまう。

    僕にとってカザンキラン一家は「ヒーロー」である。

    今後、僕だけのヒーローにならないことを祈る。


    - 野本大

    1983年生まれ。高校卒業後、日本映画学校入学。ドキュメンタリーの製作を学ぶ。2年次に、自傷癖のある女子高生を撮った『*@17』の演出を務め、卒業制作にクルド難民企画を提出するも、あえなく落選。撮影を続けるために、同校を中退し『バックドロップ・クルディスタン』を完成させる。