アキ・ラーの少年たち
Aki Ra's Boys-
シンガポール、カンボジア/2007/クメール語、英語/カラー/ビデオ/57分
監督:リン・リー、ジェームス・ロン
撮影、編集、録音:ジェームス・ロン
技術マネージャー:ラージェーシュ・ニルヴァーニー
製作:リン・リー
製作会社:リアンナイヌ・フィルムズ
配給:スマイリー・フィルム・ディストリビューション・アンド・ワールド・セールス
地雷で右手をもがれた少年ボレアと相棒ヴァンナ。ふたりの居場所であり遊び場であるそこは、アンコール近くのシェムリアップ郊外にある地雷の被害にあった子どもたちが住まう「アキラの博物館」。主宰者である元兵士アキ・ラーは、まだ何百万と眠る地雷を1つひとつ地道に潔く撤去し、博物館に並べていく。家族と離れて住む寂しさや身体の痛みを抱えながらも、やんちゃで負けん気たっぷりなふたりは真剣に取っ組み合い、サッカーに熱中し、アキ・ラーの手伝いや訪れる観光客の相手をする。そんな毎日を過ごす少年たちの健やかな輝きが眩しく生への熱情を瞼に焼き付ける。
【監督のことば】“犠牲者”とは何だろう? ボレアに会った時、彼が自分を憐れむ様子をまったく見せないことに、私たちは新鮮な驚きを覚えた。この少年は、地雷の被害で大きな悲劇を経験した――大人でも深く絶望してしまうようなひどい事故だ。それなのに彼は、障害をほとんど苦にしていない。
彼の世界は、希望と可能性に満ちている。
私たちがボレアに興味を持ったのは、その溢れんばかりの生への情熱に引きこまれたからだ。しかし撮影の最中に、私たちは厳しい現実に直面することにもなる。アキ・ラーに導かれて地雷原に入ると、そこには、まだ地雷が埋まっている土地を耕さなければならない農民や、「危険」という標識のすぐそばで遊ぶ子どもたちの姿があった。
片腕のないボレアは、離れた実家に帰ると、自分は一家でいちばん“恵まれた”子どもだということを何度も認識させられる。アキ・ラーの少年たちのひとりである彼は、学校に行って、英語や美術や音楽を学ぶことができる。彼の兄弟や姉妹にとって、こんな機会は望むべくもない。一方でボレアは、恵まれているがゆえに家族を支えることを期待されている。
“犠牲者”とは何だろう? ボレアと過ごした時間は、私たちに多くのことを教えてくれた。ボレアは、カンボジアの知られざる一面を見せてくれた。そして、逆境を乗り越えるということの本当の意味を教えてくれた。
(右から) ジェームス・ロン 香港生まれ、イギリスで教育を受ける。日本のプロダクションでプロモーション・ビデオのプロデューサーになるも、2001年からはインディペンデントで監督、撮影、編集を行っている。 リン・リー 国際ニュース放送局でキャリアを始め、ニュース・アシスタントからシニア・プロデューサーになる。2000年には国連による東ティモール初の国営テレビ局創設に携わる。2002年からインディペンデントのプロデューサー、監督、ライターとして活動している。 ふたりで初めて共同製作した長編『Passabe』は、サンダンス・インスティテュートのドキュメンタリー基金から資金提供を受けた。『アキ・ラーの少年たち』は第2作目。その後、香港のホームレスで結成されたサッカーチームを描いたドキュメンタリー『Homeless FC』を完成させた。 |