亀井文夫特集 [劇映画]
女ひとり大地を行く
Woman Walking Alone on the Earth-
1953/モノクロ/16mm(原版35mm)/132分
監督:亀井文夫
脚本:新藤兼人、千明茂雄
撮影:仲沢半次郎
編集:長沢嘉樹
録音:安恵重遠
音楽:飯田信夫
美術:江口準次
出演:山田五十鈴、岸旗江、沼崎勲、宇野重吉
製作会社:日本炭鉱労働組合北海道地方本部、キヌタプロダクション
提供:日本ドキュメント・フィルム
巻頭に「この映画は、北海道の炭坑労働者が一人三十三円づつ出しあってつくった映画である」とクレジットされる。1929(昭和4)年、貧困にあえぐ農村から10円札3枚で炭鉱に売られた男、過酷な労働、リンチ、搾取という労働の実態が描かれる。ある日、大爆発が起き、多くの犠牲者が出る。その妻は、夫を追って北海道に渡り女炭鉱夫として苦難の生活を始める。彼女に好意を持ったひとりの青年が現れるが、赤紙で戦争に取られ戦死。戦後は、8時間労働制、女性の坑内労働の禁止、男女同一賃金制など労働条件の改善が見られたものの、朝鮮戦争で増産体制、労働が強化され病人やケガ人が続出。長い人生を終え、その妻の死のクライマックス。帰国した中国人から労働旗が届き、遺骸の胸にかけられる。誰からともなく労働歌が流れだし、その声は炭鉱中に広がっていく。亀井はここで、人間解放の明るく力強い映画を作ろうとした。300万円の資金供与と炭労北海道支部の全面協力という条件で撮影は進められたが、製作費は結局2400万円かかり大赤字となった。興行成績、作品評価とも芳しくなく、亀井は劇映画から去り再びドキュメンタリーの道を歩むことになる。