亀井文夫特集 [戦後のドキュメンタリー]
世界は恐怖する―死の灰の正体
The World Is Terrified: The Reality of the "Ash of Death"-
1957/モノクロ/16mm(原版35mm)/79分
監督:亀井文夫、勅使河原宏、小山内治夫
撮影:菊池周、藤井良孝、臼田純一、西堀美知江
編集:守随房子
録音:大橋鉄也、奥山重之助
音楽:長沢勝俊
解説:徳川夢声
照明:久米光男、青木利夫
製作:大野忠、井上猛夫
製作会社:日本ドキュメント・フィルム社、三映社
提供:日本ドキュメント・フィルム
米ソの核兵器開発競争が熾烈をきわめた時代、ビキニ水爆実験による「第五福竜丸事件」、「死の灰」、「放射能マグロ」、「放射能雨」などの言葉がマスコミを賑わし、核実験が続く中で、だだひとつ被爆国日本の不安は大きかった。そうした時代背景にあって、「死の灰」放射能とは何か、それは生き物にどんな影響を与えるのか? 多数の科学者、医者、研究機関の協力を得て科学的に放射能の恐ろしさを解明していく。1986年のチェルノブイリ原発事故の後、この映画は再び脚光を浴びたという。優れた科学映画との評価も高く、現在に至るも各地で上映されている。最後に「死の灰の恐怖は、人間がつくり出したものであって、地震や台風のような天災とは、根本的にちがいます。だから人間がその気にさえなれば、必ず解消できる筈の問題であることを、ここに附記します」と、作者の言葉が出る。解説は有名な活動写真弁士で『小林一茶』(1941)の名調子で記憶深い徳川夢声が担当。外国映画の配給会社、三映社により配給され全国の劇場で公開、世界の人々の目に触れるよう広く諸外国で公開することを目指した。小川紳介は生前「亀井の能力を超えてすごい作品」と評していた。