亀井文夫特集 [戦後のドキュメンタリー]
人間みな兄弟―部落差別の記録
Men Are All Brothers-
1960/モノクロ/16mm(原版35mm)/60分
監督:亀井文夫
助監督:楠木徳男
撮影:菊池周
録音:大橋鉄矢
音楽:長沢勝俊
解説:宮田輝
原案:杉浦明平
製作:松本酉三、大野忠、木村繁夫
製作会社:日本ドキュメント・フィルム、芸術映画社、松本プロダクション
提供:日本ドキュメント・フィルム
月ロケットが飛ぶ宇宙時代の日本に、6000部落、300万人が理由なき差別を強いられ、苦しみのどん底にあえいでいる。この映画は、部落差別を当然と思いこんでいる人たちに反省を求め、知らない多数の国民にこの恐るべき悲しむべき事実をありのままに訴えるために製作された。スタッフ7人は、大阪、京都、奈良、和歌山、三重、長野と、1959年の8月から半年かけて撮影、結婚差別、就職差別など様々な人々の悩める声を聞き、差別の実態に迫っていく。ハンダの屑が含まれるゴミ土や灰を集めて小川で洗い出す少年、鹿子絞りをする女性、草履づくり、食肉関連事業、皮革生産者などの生活を追う。差別構造の発端は、近世封建社会において民衆を支配するために人為的、政治的に作られた身分制度。明治4年の太政官布告(解放令)で身分差別は廃止されたが、形式的なものとなり資本主義の発達と共に差別は助長されてきた。戦前の水平社運動から発展して戦後、部落解放同盟が結成され、行政闘争を行いアパートも一部建設されているが、部落解放の闘争はまだまだ続く。人権意識の高まりを背景として1965年8月、国の同和対策審議会は「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本方策」について内閣総理大臣に答申。その結果、同和対策事業特別措置法が制定され、1969年7月から施行、地区の改善が進められたが、この映画は答申前の貴重な記録となっている。