亀井文夫特集 [戦前のドキュメンタリー]
信濃風土記より 小林一茶
Kobayashi Issa-
1941/モノクロ/35mm/27分
演出:亀井文夫
撮影:白井茂
録音:酒井榮三
音楽:大木正夫
解説:徳川夢声
製作会社:東宝文化映画部
提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
1940年に長野県の観光課の協力で「信濃風土記」三部作として企画され、1作目の『伊那節』(フィルム現存せず)に続く2作目の作品。3作目になる予定だった『町と農村』は完成しなかった。信濃出身の19世紀の俳人・小林一茶の俳句をモチーフにして、県の8割以上が山岳地帯で占められた信濃の農民の自然と貧困の中での生活を、『関東大震災記録』(1923)、『怒涛を蹴って』(1937)などのカメラマン・白井茂撮影による詩的な画面で描いた。日本で初めての詩的ドキュメンタリーとしての評価も高く、これが亀井の最高傑作と評するファンも多い。この作品を発表したあと、亀井は思いもよらず検挙され投獄された。『上海』以来、一般大衆の反戦的共産主義の啓蒙昂揚を図ったとの理由での投獄だったが、戦中投獄された映画監督は亀井ただひとりであった。