中国街の思い出
In Memory of the Chinatown紀念中國城
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台湾/2016/中国語/カラー、モノクロ/Blu-ray/30分
監督、脚本、編集、音楽、アニメーション、提供:陳君典(チェン・ジュンディェン)
撮影:楊鎮宇(ヤン・チェンユィ)、陳君典
録音:林秉君(リン・ビンジュン)、陳君典
製作:張若涵(チャン・ルオハン)
製作会社:国立台南芸術大学ドキュメンタリー&映像保存研究所
台南市で1970年代に建設された住宅と商店街が同居する「中国城」が取り壊される。息をひそめながらその日を待つ建物で、監視カメラは開かないシャッターを映し続け、犬は定位置に寝転び、カラオケ店ではモニターが光り、マイク音がくぐもる。廃墟のような建物の呼吸とかつての住人の記憶が呼応し、亡くなった人を偲ぶように住人が語るのは、かつて界隈が賑わっていた頃の様子であり、その人の人生、この街の歴史の一幕でもある。
【監督のことば】ある建物の存在は、時間と空間という背景の移り変わりとともに、動的かつ有機的な状態として現れるだろう。繁栄から荒廃へ、整備された状態から崩壊へと向かい、さまざまな外在的要因(政府の政策、都市計画)と内在的要因(居住者の使用状況)によって、その運命の向かう方へ絶えず引っ張られていく。しかし、結果的にどのような方向に行ったとしても、そのプロセスにおいて、建物自身が自らの歴史的価値を生むのであり、この歴史的価値は、建築物が廃墟化したり、建て替えられたり、取り壊されたりすることで消し去られることはないだろうし、消し去ってはならないはずだ。
だからこの作品は、動的映像を主とせず、むしろ大量の写真を表現の主体としている。動的映像は常に時間軸に順応して、積み重なり進んでいくことで形成される叙事であり、写真は時間軸のある一面だけを切り取り、サンプリングしたものだ。だが、物理的な時間の凝固は、見る者の心の奥にある時間の感覚をなお一層撹拌する。私は、ここにひとつの記念碑を建て、映像をその石柱に見立て、人々の語りをその碑文とし、失われようとする場所の景観を記念しようと試みた。
1989年、台湾生まれ。国立台南芸術大学ドキュメンタリー&映像保存研究所で学んだのち、長編映画、ドキュメンタリー、アニメーションなど、多彩な分野へと活動の場を広げている。世界各地の映画祭で上映された『Sick Building Syndrome』(2015)のほか、『Double Suicide』(2014)、『A Taste of Desire』(2015)などの作品がある。