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[レバノン、アラブ首長国連邦]

そこにとどまる人々

Those Who Remain

- レバノン、アラブ首長国連邦/2016/アラビア語/カラー/Blu-ray/95分

監督、脚本、編集、製作:エリアーン・ラヘブ
撮影:ジョセリーン・アビー・ガブリエール
録音:ビクトール・ブレッセ
製作会社、提供:Itar Productions
www.itarproductions.com

シリアとの国境に近いレバノン北部。長く続く宗派間紛争やシリアでの戦闘により農地は放置され、かつては異教徒が隣り合わせで暮らしていた村にも排他的な空気が覆う。ハイカルおじさんはりんごや羊を育て、石を一つひとつ積み上げては、別れた妻や子どもたちがいずれ帰ってくるための家を建て、食堂を切り盛りするルワイダと、いつも通りの日常を送る。この土地に居続ける行為そのものが、まるで使命であるかのように。



- 【監督のことば】ハイカルの物語が現在の政治において重要なのは、その名が示すように、彼が地理や宗派が交叉する地域(シーア派が開拓したヘルメルと、スンナ派の支配するレバノン・シリア国境地帯、それから彼の住むキリスト教徒の村)を守護する聖堂のような存在であるからだ。それは、過激派の脅威への恐れが広がるなか、自分たちの土地に留まろうとするキリスト教徒たちの欲望を表している。宗派にこだわる他の村人たちとは違い、ハイカルは自ら手を動かすことで抵抗する。イスラム教徒と共に暮らすキリスト教徒として、彼はこの土地に根付いている。

 ハイカルは自らがうちたて守る住処における聖堂のような存在なのだ。『そこにとどまる人々』は、地中海東岸のキリスト教徒をその土地に単に留め置こうとするだけの国内の状況に対するメタファーとしてハイカルの物語を見つめようとするものだが、それは何らかの宗派的立場からなされるのではない。というのも、ハイカルの主要な部分を占めているのは、人間としての彼であって、宗派としての彼ではないのだから。


- エリアーン・ラヘブ

レバノンの映画監督。短編作品として『The Last Screening』(1996)、『Meeting』(1997)、中編ドキュメンタリーとして『So Near Yet So Far』(2002)、『Suicide』(2003)、『されど、レバノン』(2008、YIDFF 2009アジア千波万波奨励賞)があり、『されど、レバノン』はARTE/ZDF、アルジャディード、NHKでテレビ放映もされた。長編ドキュメンタリー第一作である『Sleepless Nights』(2012)は、50以上の映画祭で上映され5つの賞を獲得したほか、『Sight & Sound』誌の2013年ドキュメンタリー・ベストにおいて第5位にランクイン。長編第二作となる本作は、ドバイ映画祭長編部門、イスマイリア国際映画祭ドキュメンタリー部門、テトゥアン国際地中海映画祭ドキュメンタリー部門で、それぞれ審査員賞を獲得した。また、映画協会「ベイルートDC」の創立メンバーとして、いくつかのドキュメンタリー・ワークショップを開催、この組合が主催するアラブ映画祭「ベイルート・シネマ・デイズ」では6回目まで芸術監督を務めた。