アフリカを/から観る
第1部 自画像を描き直すアフリカ
第2部 アフリカの抱える課題 それぞれの視角
第3部 はじけるアフリカルチャー
激動の時代を生きぬくアフリカをとらえる
21世紀はアフリカの世紀だと謳われてはや幾年、経済成長の果実は、決して均等ではないにしても、各地で確実に実りはじめ、新生アフリカを背負うプライドに満ちた新世代を生み出してきた。しかし一方で、「新たなアフリカ分割」と呼ばれる資源争奪戦は熾烈を極め、史上初となる米軍のアフリカ方面の統合軍AFRICOMも誕生し、「テロとの闘い」も深化してきた。アフリカは今、再び激動の時代に突入している。
「アフリカを/から観る」では、アフリカを内外問わず、さまざまな距離や視点から描いた個性豊かな22の作品群が揃い、多方面から大陸に光を当てて、21世紀アフリカという像を結ぶ。
アフリカ大陸には西サハラを含め54の独立国があるが、本プログラムはサブサハラ地域の作品を中心にして、3つのパートで構成される。2013年より続くアラブ特集で紹介されてきたサハラ以北の作品と合わせると、より立体的に大陸が見えてくるだろう。
第1部「自画像を描き直すアフリカ」では、映画界のみならず、広く大陸を席巻する「アフリカからの視点でアフリカ像を再構築する」という衝動が、映像という形で語られた作品群だ。『植民地的誤解』(2004)では、ドイツ人宣教師という存在を軸にして、植民地化で起こった土地にとどまらない魂の収奪が語られる。『キューバのアフリカ遠征』(2007)では、アミルカル・カブラルへの支援、チェ・ゲバラによるコンゴ革命軍への指導など、冷戦時代のキューバのアフリカ解放への関与が描かれ、冷戦時代という現代アフリカ史の最も重要な、しかし空白であり続けた1ページが埋められる。
第2部「アフリカの抱える課題 それぞれの視角」では、紛争や貧困、社会問題などに国籍も背景も異なる監督たちが、それぞれの視点から迫る。『モガディシュの兵士』(2016)では、実際に従軍した兵士が撮影した生々しい映像が「テロとの闘い」の矛盾を暴く。『ロバート・ムガベよ、いったいどうしたのか?』(2011)では、“クレイジーな独裁者”とだけ評されることが多いジンバブエのムガベ大統領の実像に、建国の英雄であった時代からムガベを知る監督が丹念な取材で迫る。
第3部「はじけるアフリカルチャー」では、アフリカのレジリエンス(逆境を克服する力)の根幹にある、文化の持つ力に着目する。『アフリカン・サイファー』(2012)は、南アフリカのソウェトで、ポスト・アパルトヘイト時代にあって、貧困や差別と闘いながらストリートダンスに情熱を注ぎ、そこに絶望を生き抜く哲学を見出した若者たちを描く。『イントレ』(2014)では、1994年の大虐殺で深く傷ついたルワンダ社会が、ポップミュージックや伝統舞踊を通じて自らを再生させる姿を描く。
これらの作品から浮かび上がるアフリカの姿は、まるで満身創痍にもかかわらず、未だかつてないエネルギーをみなぎらせ、北からだけでなく、新たに西からも東からも押し寄せる荒波に時に呑み込まれながら、しかし決して溺れはせず、身体中を軋ませながらも前進を続ける巨象のようである。スクリーンに焼き付けられたその歩みに、日本に生きる我々もなにがしか感ずるところがあるに違いない。