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[中国、シンガポール]

カーロ・ミオ・ベン(愛しき人よ)

Caro Mio Ben (My Dear Beloved)
梧桐树

- 中国、シンガポール/2017/中国語、中国手話/カラー/Blu-ray/118分

監督:蘇青(スー・チン)、米娜(ミーナー)
撮影:蘇青、張勤(ジャン・チン)、米娜、杜建濱(ドゥ・ジェンビン)、陳嬌(チェン・ジャオ)
編集:郭曉東(グオ・シャオドン)、米娜
録音:蘇青、張勤
音楽:王怡雯(ワン・イーウェン)
製作:郭曉東
製作会社、提供:Levo Films

河南省・鄭州市、視力や聴力に障害を持つ子どもたちが通う特別支援学校の日常世界。賑やかな学校生活のなかで思春期を迎える少女たちが、手話や振動や「カーロ・ミオ・ベン」の美しい歌声で表現するのは、先生に対する反抗、大好きな亀への気持ち、将来の不安、不公平な神様への嘆きといったそれぞれの思い。彼女たちの成長を見守るかのようなカメラは、その言葉やしぐさを丹念に捉えながら、心の揺らぎを見つめ、受け止める。



【監督のことば】『カーロ・ミオ・ベン(愛しき人よ)』は社会における特殊な状況の人びとに注目した長編ドキュメンタリーであり、今回、私たちは河南省鄭州にある特別支援(盲・聾)学校にカメラを据え、長い時間をかけて観察し、寄り添い、子どもたちの成長過程を記録した。

 私たちが聴覚障害者のドキュメンタリーを撮り始めてすでに十数年経つが、この間、聴覚障害者の人たちと親しく友人付き合いすることが、暮らしのなかで常態化した。そして、ドキュメンタリーをきっかけに、2008年に聴覚障害者たちが働くレストランを開いた。このレストランは開店から9年になり、私たちはドキュメンタリーを自分たちの生活に溶け込ませ、映画制作と実生活は互いに不可分のものとなっている。

 本作は2011年末から撮影を始めたが、私たちが選んだ撮影対象は、特別支援学校の子どもたちだ。こうした子どもたちは身体的に重い障害を背負っていると受け取られ、しばしば大変心配され、同情を寄せられる対象となるのだが、実際は決してそうではない。私たちのカメラがとらえた子どもたちの明るく輝くまなざしと美しい心の世界、一人ひとりの子どもの生き生きとした生命力と強い意志の力は生命への賛美であり、あるいは現実社会のなかで生きる「健常な」人びとにとっては、心を癒し、浄化してくれるものだと言えるだろう。

 中国の特別支援教育という題材は、これまでドキュメンタリーの真空地帯とも言えるが、子どもたちの成長をリアルに映し出すことは、社会の進歩のシンボルであり、またドキュメンタリストの責任でもある。彼らは他の子どもたちとは全く異なる感覚の世界を持っており、私たちは静かに観察し、寄り添うことを通じて、沈黙と闇を探りたいと願っている。それはまた、幻想と驚きに満ちた未知の世界でもあるのだ。


- (右から)
蘇青(スー・チン)

内モンゴル生まれ、北京在住。1998年から2002年まで、重慶テレビや中国中央テレビで番組ディレクターを務める。この時期の演出作には、海外配信用のテレビシリーズ『Chinese Folk Art』や『Chinese Relics』、連作ドキュメンタリー『Stories of the Chinese』などがあり、人物主体のドキュメンタリー『Song of Life』は、優れた中国のテレビ番組の制作者に贈られる星光賞にノミネートされた。2002年に独立、インディペンデントのドキュメンタリー監督・プロデューサーとなる。代表作は、『白塔』(2004、YIDFF 2005)、『Sign Language Time』(2010)など。



米娜(ミーナー)

重慶生まれ。現在は北京在住で、インディペンデントのドキュメンタリー監督として活躍。北京服装学院で衣装デザインの学士号を取得したのち、中央美術学院でアートマネージメントの修士号を取得。2002年より、『白塔』(2004、YIDFF 2005)、『Sign Language Time』(2010)といったドキュメンタリーを蘇青と共同で制作している。