長江の眺め
A Yangtze Landscape長江
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中国/2017/中国語/モノクロ/Blu-ray/156分
監督、撮影、編集、録音:徐辛(シュー・シン)
音楽:フランシス=マリー・ウイッティ、 ガレス・デイヴィス
音響:婁堃(ロウ・クン)
エグゼクティブ・プロデューサー: 金昊昀(リンダ・キム)、宋曉佳(ソン・シャオジア)
製作:楊竞(ヤン・ジン)、周行(ジョウ・ハン)
プロデューサー:許飛雪(シュウ・フェイシュエ)、張君(ジャン・ジュン)、盧志新(ルー・ジーシン)
製作会社、提供: 徐辛ドキュメンタリー・フィルム・スタジオ
揚子江を上海から主流の原地点宜賓までゆっくりと遡る情景を描きチベットまでたどる。その間、沿岸で生活する人びと、ホームレスなどを撮っていく。廃墟のような場所もあれば、大都市、景勝地も現れる。それぞれの地点で事故や事件で死亡した人数などを文字で表わし、ほとんどダイアローグはない。ゆったりとした映画的時間のなかに、中国の大きさと現代中国の混沌が浮かび上がる。
【監督のことば】2012年、映画『長江図』の監督である楊超から、撮影スタッフに同行し、その映画とは別に長江についてのドキュメンタリーを撮らないかと誘いを受けた。私は長江下流の都市泰州の出身で、小さい頃から長江には思い出がある。1949年以来、政府はずっと長江を母なる川と呼んで宣伝をしているが、中国の理性的でない発展のせいで、今や長江の文化、生態は激しく破壊されてしまった。
このドキュメンタリーは「長江」を用いて現在の中国の混乱ぶりを隠喩したものである。本作は叙事の形を取っておらず、全編にわたってほぼ会話もない。カメラを船の上に据え、船を三脚のように、長江を巨大な映画撮影用レールのように見立て、長回しを多用し、固定撮影している。簡潔かつ冷静な観察で、長江沿いの「風景」をスキャンするように撮っている。長江が海へ注ぐ上海から出発し、南京、武漢、三峡ダム、重慶を経て、長江上流の宜賓まで遡り、そこからは陸路を取って、長江源流の青海省、チベット自治区に至るまで、その総撮影距離は1万キロを超えた。編集では、映像に実験音楽と現場の雑音を混ぜ合わせ、奇妙な現実に漂う空気を演出している。作品に出てくる人物は、あたかも中国伝統の山水画の巻物に描かれる「点景」のようである。この映画を観れば、この長江という死んだ川が、まさに現代中国を映し出していることに気付くだろう。
1966年、江蘇省泰州生まれ。北京と南京を拠点に、インディペンデントのドキュメンタリー映画作家として活動する。江蘇教育学院美術科出身であり、国内外のギャラリーで油彩画や写真の展示も行っている。2000年よりドキュメンタリー映画制作を開始し、テーマとしては、中国の下層階級ないしは中国社会の周縁に追いやられた人びとを描くことが多い。ドキュメンタリーを歴史の創造に参加する手段とみなす彼の作品には、『Ma Pi』(2002)、『Carriage』(2004)、『Fangshan Church』(2005)、『火把(たいまつ)劇団』(2006、ドキュメンタリー・ドリーム・ショー 山形in東京2008で上映)、『Karamay』(2010)、『Pathway』(2011)などがある。