銅山の村
The Copper VillageTama Gaun
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ネパール/2015/ネパール語/カラー/Blu-ray/90分
監督、撮影、録音:ディペシュ・カレル、フローデ・ストラース
編集:ディペシュ・カレル、齊藤麻実、フローデ・ストラース
提供:ディペシュ・カレル
長い歴史を持つ西ネパールの銅山の村オカルボットでは、グローバリゼーションの影響で35年ものあいだ操業が停止していた。ある日、かつての鉱員たちと村人によって、失われつつあった手作業による採掘と精錬・鋳造技術が賑やかに再現され、カースト制度の痕跡を残す村の生活や祭とともに、映像人類学的な眼差しのもと記録される。撮影が元鉱員たちにもたらす高揚感が村人たちを動かし、再現記録の枠をはみ出していく。
【監督のことば】2010年10月、私たちは銅の採掘・精錬技術について知るため、はじめてオカルボットを訪れた。当地で古来より受け継がれてきたその貴重な知恵は、急速に失われつつある。数週間の滞在のあいだ、私たちは鉱山で働いていた家族に話を聞き、生活を観察しつつ、そうした世帯の内外から取材を重ねていった。
ここで私たちが記録した音声や映像は、グローバル化がもたらすオカルボットの住民に対する影響が、他のどこよりも甚大なものであることを示していた。ここ数十年来すすめられてきたネパール政府の市場開放政策は、鉱山労働者やその家族、村の伝統的な社会生活において、ますます憂慮すべき事態をもたらしている。より具体的に言えば、ネパールの市場に営利を第一とする同業者が参入するようになって以降、伝統的な技術と知識で続けられてきた地元の銅産業は、衰退の一途を辿ることになった。鉱員たちは仕事をなくし、職を求め村を出ていくようになった。
グローバル化以前のオカルボット村は、地域として独立し、個としてのまとまりをもった場所であり、地理的な要因とそこで培われた経験とが、文化的に持続したつながりを有していた。しかしいま、グローバリゼーション文化は、村人たちの生活、社会文化、生計そのものの基盤を、多方面から切り崩しにかかっている。その言語、文化、生活様式は、このグローバリゼーション文化の押しつけにより、絶滅の危機に瀕している。こうした背景を踏まえ、本作は、元鉱員たちとその村を整合性のとれた物語として記録にまとめ、古来より伝わる貴重な銅の採掘法を記録として残すことを目指している。
ディペシュ・カレル、
フローデ・ストラース
ネパール出身のディペシュ・カレルは2006年、ノルウェーのトムロソ大学より、映像人類学とドキュメンタリー映画研究で修士号を取得。これまで制作したドキュメンタリー作品には数多くの受賞歴があり、なかでも『A Life with Slate』(2006)と『Playing with Nan』(2012)は、世界各地の映画祭で上映され、南アジア映画祭、英国王立人類学協会主催の国際民族誌映画祭(2007年)、カトマンズ国際山岳映画祭(2013年)などで受賞している。現在、東京大学博士課程に在籍。
フローデ・ストラースはノルウェーの映画作家で、ベルゲン大学の博物館映像社会人類学教授。