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[フランス、レバノン]

たむろする男たち

Standing Men
Des hommes debout

- フランス、レバノン/2015/アラビア語、フランス語/カラー/Blu-ray/55分

監督、脚本:マーヤ・アブドゥル=マラク
撮影:クレール・マトン
編集:フローランス・ブレッソン
録音:ダナ・ファルザヌプール、ジョゼフィナ・ロドリゲス、マチュー・ファルナリエ、エマニュエル・クロセ
製作:アンヌ=カトリーヌ・ウィット
共同製作:Orjouane Productions、Synapse TV
製作会社、提供:Macalube Films

3つの電話ブースがあるパリの街角の小さなお店には、中東から出稼ぎに来ている労働者が、遠く離れた故郷へ電話をかけにやってくる。店主はカウンター越しにコーヒーやケーキを出し、親しげなアラビア語のおしゃべりから、家族や仕事のことなど、それぞれの日常がこぼれ落ちてくる。そして、14年ぶりにアルジェリアの家族のもとに一時帰国するムスタファの会話と、かつて監督の父がレバノンの家族にあてた手紙が、男たちが集う空間で呼応し、郷愁の想いが時を止める。



【監督のことば】パリのベルヴィル地区に住み、フランス人でありレバノン人でもある私は、近隣の移民たちの映画を撮りたいと願っていた。その舞台に選んだのは、いつも男たちの集団がたむろしているコールショップ(長距離電話を割安に利用できる店)だ。映画の舞台はこの店だけにしたかった――それは、移民であるということの条件を問うための定点なのである。故郷とのつながりが地平線の向こうに消えていないのに、私たちはどうやってどこかに根を下ろすことができるのだろう? 此処と彼地のあいだを取り持つことはできるのだろうか? そこにいるわけでもないのに、どうしたら母国とつながっていると感じられるだろう? 私たちの起源となる国は、ここに無く、ここに在る。目に見えないが、触知できる。視界の外にありながら、絶大な力を有している。

 撮影を始めた頃、実家で手紙の束を見つけた。1972年にフランスにやってきた父が当時レバノンの家族に宛てて書いたものだ。私のカメラの前の「たむろする男たち」、とくに映画の鍵となる人物であるムスタファとこの手紙は、明らかに共鳴している。ムスタファの経験は、すべての移民の物語を語っているのである。


- マーヤ・アブドゥル=マラク

1980年ベイルート生まれ。フランス=レバノン人の映画作家。近代文学の大学教員資格を取得した後の数年間、フィクション映画のシナリオ監修に携わりつつ、レバノンとフランスで数本のドキュメンタリーの脚本を共同執筆する。2010年、初の監督作となるドキュメンタリー『Au pays qui te ressemble』(In the Land that is Like You)を発表。この作品はいくつかの映画祭で上映され、ペルソナ国際短編映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。本作は監督第2作となる。