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[イラン]

ミーナーについてのお話

A Report about Mina

- イラン/2014/ペルシャ語/カラー/Blu-ray/54分

監督、撮影、製作、提供:カウェー・マザーヘリー
助監督:ファテメ・アジジ
編集:プーヤン・ショーレワル
録音:アーマド・アフシャール
整音:ハッサン・シャバンカレー

テヘランの公園の片隅でゴミとともに暮らす女性ミーナー。ラジオニュースが流れるなか、新年の喧噪をよそに野良犬と戯れ、夜は焚き火の周りで、クスリや煙草を求めてくるホームレスとたわいない会話を交わす。そんなミーナーにも、夫と暮らし、身ごもった子どもを死なせた過去があり、普通の生活を送る夢がある。いまや犬やホームレスたちのゴッドマザーとなっているミーナーを見つめた14日間。



【監督のことば】母が死んだのは、私が9歳のときだった。母の死後、父は私たちを置いて家を出ていった。残された兄と私は、二人だけで生活していかなければならなかった。その父も8年後、私が17歳のときに他界した。それから2年が経ったある日、一族の集まりがあった際、父が公園で物乞いをしているのを見たことがあると話してくれた人がいた。それ以来、もう何年もずっと、ひとつの問いが私の頭に浮かび続けている。「どうして父は私たちを捨てたまま戻ることなく、路上生活をする羽目になったのだろう?」。こうして私は、ホームレスについての映画を作ることになった。

 『ミーナーについてのお話』は、父の人生という謎を掘り返そうとする試みである。ミーナーと出会ったとき、私が何年も探し求めていたものを、彼女が持っているに違いないと確信した。ミーナーとは、テヘランの公園で希望を秘めた生活を送っている女性なのだ。

 正月休みの間、私はミーナーのところに行くことにした。イランのほとんどの人々が家族や友人と楽しく過ごしている、そんな時期に。半年前からミーナーのいる公園に通いつめ、彼女や他の人たちとも話をしていたので、友人と呼べる関係にはなっていた。

 私はカメラのスイッチを入れて、ただ観察したものを記録しようとした。ひたすら見るだけでなにも干渉しない、それで父に対する執着への答えが見つかればいい、事前に決めていたのはそれだけだ。私の執着にも小さな変化があった。現在は、ミーナーがこんな環境から抜け出そうともせずに生きているのはなぜかという疑問がさらに加わったのである。


- カウェー・マザーヘリー

1981年、イラン・テヘラン生まれ。2004年に大学を卒業した後、かねてより映画に傾倒していたことから、雑誌で映画批評を執筆するようになる。最初の短編『Tweezers』(2007)はイラン国内で検閲の対象となったが、これまでに自主制作の短編が3本、イランのテレビ放映用に制作されたドキュメンタリーが短編・長編あわせて20本以上あり、それらの作品は、テヘラン国際短編映画祭や〈シネマ・ヴェリテ〉イラン国際ドキュメンタリー映画祭など、国内の複数の映画祭で上映されている。また、自身の作品以外でも、編集者や執筆者として様々なプロジェクトに参加している。主な監督作品に『Soori's Trip』(ドキュメンタリー、2009)、『Labyrinth』(連続ドキュドラマ、2013、全15話)、『Cockroach』(短編フィクション、2015)などがある。