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[ボスニア・ヘルツェゴビナ、シンガポール、ドイツ]

太った牛の愚かな歩み

Foolish Steps of a Fat Cow
Langkah Bodoh Sapi Gemuk

- ボスニア・ヘルツェゴビナ、シンガポール、ドイツ/2015/マレー語、英語、ドイツ語/カラー/Blu-ray/20分

監督、脚本、撮影、編集、録音、ナレーション、製作:ガージ・アルクッツィ
音楽:ケルビン・マクレオッド
製作会社、提供:WideWall Studio

監督をベルリンへと駆り立てる罪悪感とは? 異郷の地サラエボを抜け出した彼は、「自分の宗教に反することをしてはいけない」という母の言葉を反芻しつつ、新たにドイツに住み始めた友人の同性カップルのもとを訪ねる。4年前にベルリンのゲイクラブで起きたこと、そして自分へのケリをつけるため、再びそこに足を踏み入れるのだった。過去に逡巡しながら自身の心の奥底まで覗き込む、ある男の心のロードムービー。



【監督のことば】エルトン・ジョンの歌詞にあるように、「ごめんって言葉は一番言えない言葉だ」。でも僕は、謝罪する必要があるということを認める方が、もっと難しいことなのだと思う。この過ちを認めるのに、僕は4年もかかってしまった。直感的な選択だったけれど、僕は謝罪すべきあの人を見つけることにした。

 この旅は、精神的にきついものだった。その途上で新たな経験をし、自分の奥深くにある感情を見つめ、愛の複雑な意味について考えた。僕は、自身を遮ることで恐れから身を守り、それから愛を探すことを知った。またその恐れこそは、愛への誘惑なのだと理解した。愚か者にはこの謎は解けない。そして僕はその愚か者なのだ。

 この企画は、僕が過ちを犯したということ、その人に謝りたいと思っていることを認識するところから始まった。その後にもたらされたものはひとつではない。他にも沢山の人に謝らねばならないことに気付いたのだ─誰よりも、僕自身に。


- ガージ・アルクッツィ

シンガポール出身の映画作家。監督作品は、オーストラリア、イギリス、ドイツ、インドネシアなど多くの国々で上映されており、シンガポールのヴァレンタイン・ウィリー・ファイン・アートをはじめ、ギャラリーでの上映も多い。2007年、ザ・サブステーション内のギネス・シアターで、同年制作の『Lakshmi』、『Serah Diri』、『Block 46』の3本を特集上映。2008年にゴー・チョクトン有望若手スカラシップより奨学金を得、2011年には、韓国の富川国際ファンタスティック映画祭で開かれた、アジア・ファンタスティック映画制作ネットワーク主催の教育プログラム「アジアン・プロデューサーズ・ラボ」に招待参加する。2012年にテマセク教育基金サンバースト奨学生として、デジタル映画製作の美術学士号を取得。『Lost in Bosnia』(2014)はナット映画祭(コペンハーゲン)、シンガポール国際映画祭など、世界中の多くの映画祭で上映されている。本作はロッテルダム国際映画祭(2015)で上映された。現在、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボに拠点を置き、タル・ベーラが主宰する「フィルム・ファクトリー」の修士課程に在籍。現在のモットーは「Tシャツを買うなら、その分のカネで映画を作れ」。