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[ボスニア・ヘルツェゴビナ、日本]

(あらがね)

ARAGANE

- ボスニア・ヘルツェゴビナ、日本/2015/ボスニア語/カラー/Blu-ray/68分

監督、撮影、編集:小田香
録音:フラデリッチ・スンチツァ、グチンスキ・グラント
通訳:フラデリッチ・スンチツァ
指導:タル・ベーラ
提供:film.factory www.filmfactory.ba

ボスニアの炭坑で黙々と働く坑夫たち。機械の音、つるはしの音、鉱石が運ばれる音、歯車の音……。絶え間なく響く音の中で、坑道を降りていく男たちを、カンテラの光と闇にうごめく彼らを、ひたすら撮る。時折交わされる仕事上の会話、掛け声、冗談……。鉱山から掘り出される石の小さな断片=「あらがね」の如く、監督は労働と鉱山そのものの断片をつないでいく。地上にあがると、外は雪である。



【監督のことば】炭鉱夫の人たちに魅せられました。肉体的な彼らの労働、そして自分たちが普段住む地面の上の世界とは全く違う地下空間。炭鉱夫の人たちは、私が彼らの世界をカメラを通して見つめ、その断片たちを編集で構成し、映画として人々と共有することのできる機会をくれました。彼らから私はたくさんの学びと温もりを得ましたが、私は映画で彼らに何を返すことができるのか。『鉱』を誰かに観てもらうこと。彼らがそこにいること、その労働空間を、その誰かと共有すること。それを徐々にでもやっていければ、少しは何か恩返しになる気がします。

 ボスニアで日本人の私が何かを撮るというのは、数年前は不可能に思えました。それは言語の壁であったり文化の違いであったりしますが、最大の壁は、自身が本当に魅せられる対象、どんなことがあっても撮っていきたいと感じる主題に出会えるかどうかだと今は思います。外国のことより日本のこと、他人のことより家族のことに心が向かうのは、ルーツからくる自然なことかと思いますが、どこにいても、何かに関心を持つことができるのなら、そのためにカメラを用いることに本質的な違いはないと、『鉱』を撮っていて感じました。


- 小田香

1987年、大阪府生まれ。2010年、ホリンズ大学で卒業制作作品『ノイズが言うには』を撮る。2013年より、サラエボを拠点とするタル・ベーラが創設したフィルムメーカー育成プログラム「フィルム・ファクトリー」に参加。2015年、初の長編である本作を撮る。