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ドリームキャッチャー

Dreamcatcher

- イギリス/2015/英語/カラー/Blu-ray/98分

監督、撮影:キム・ロンジノット
編集:オリー・ハドルストン
録音:ニナ・ライス 
音楽:スチュワート・アール
製作補:ウィル・スピアーズ、ジョン・スタック
エグゼクティブ・プロデューサー:ダン・コーガン、ジェラリン・ホワイト・ドレイフュス、レギナ・K・スカリー
製作:テディ・ライファ、リサ・スティーヴンス
製作会社:Rise Films、Green Acres Films、Vixen Films
配給:Dogwoof Global

力強く生きる女性を世界各地で撮り続けてきたキム・ロンジノットが新たな被写体に選んだのは、シカゴで性暴力の被害女性を支援する団体「ドリームキャッチャー・ファウンデーション」のブレンダ。問題を抱えた娼婦や性暴力の記憶に悩む少女らの話に耳を傾け、献身的に活動するブレンダだが、彼女自身、娼婦としての過去を持ち、薬物中毒にかかり性的暴行を受けた経験があった。「弱者」としての女性に冷淡なアメリカ社会の現実に立ち向かう彼女の慈悲と熱意が、傷ついた女たちに明日を生きる力を与えている。



【監督のことば】ブレンダ・マイヤーズ=パウェルは、4歳の時に親類から性的虐待を受けて以来、傷だらけの人生を送ってきた。売春から足を洗い、シカゴの薄暗い道ばたをうろつく少女らに手を差し伸べ、話に耳を傾けることに全力を注ごうというブレンダの決断は、その人生を一変させた。

 生きること、自分を変えることへのブレンダの熱い思いには感服させられる。10代の頃から25年に及んだ売春生活の終盤、ブレンダは路上で少女を売春へ誘い、ポン引きに紹介していた。このことに彼女は罪の意識を感じていると思う。それでも彼女は、過去から目をそらさず、自身を受け入れ、前を向いて生き続けるのだと私たちに教えてくれる。

 ブレンダは出会ったすべての少女の中にかつての自分の姿を重ねており、それゆえ彼女は皆と平等に接し、支えることができる。偽りなき心に導かれ、日中は刑務所に勤務し、さらに薬物中毒や性的虐待の経験者として、街で危険に晒される少女たちに力強いメッセージを発信しながら、多忙な日々を送っている。

 この作品が皆さんの個人的な経験のどこかに共鳴してくれれば嬉しく思う。本作は「問題提起をする社会派映画」ではなく、すべての家庭の核の部分に潜む秘密や偽りについての映画である。子どもの頃、私たちは誰もが繊細で、自分は皆と同じ世界にいると信じている。自分の毎日が他の子と異なっていても、それに気づくことはない。幸せな毎日であっても特には意識しないし、辛い毎日であれば自分のせいだと思い込み、その状態を受け入れてしまう。

 子どもは、いつか自分は大人になるという感覚がなく、ずっと子どもでいるかのような不思議な感覚を持つ。きっと誰もが子どもの頃、自分を無力でちっぽけな存在だと感じたり、大切にされていないと思ったことがあるだろう。あるいは、心の内を打ち明けたくても、大人は自分の言葉に耳を貸さないと感じたこともあるだろう。この映画は、子どもでも大人でも、ただ虐待やレイプ被害に遭った人々についての作品なのではない。かつて子どもだったすべての人々についての話であり、親に言えないことや、守らなければならない秘密、孤立した感覚、また何だか理解できぬこの世界についての話である。小説家のテリー・プラチェットの言葉を紹介したい。「人生は映画のようだと思って生きてきた。ただ私は、肝心な序盤のパートを見逃してしまったのだ」。


- キム・ロンジノット

国際的に高い評価を受けるドキュメンタリー映画作家のキム・ロンジノットは、非凡な人生を送る女性、とりわけ抑圧や差別の被害者をテーマにした作品でよく知られている。『イラン式離婚狂想曲』(1998)がYIDFF '99、『ガイア・ガールズ』(2000)がYIDFF 2001で上映されたほか、『Sisters in Law』(2005)でピーボディ賞、『肝っ玉おばちゃん』(2008)で2009年サンダンス映画祭の外国映画ドキュメンタリー部門審査員大賞、『Pink Saris』(2010)で英国アカデミー賞(BAFTA賞)など、世界各地の映画祭で多数の賞を受賞。またBBC、HBO、PBS、Channel 4など、テレビ放映用ドキュメンタリー作品も多い。