いつもそこにあるもの
Always and AgainSempre le stesse cose
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フランス/2015/イタリア語、ナポリ語/カラー/Blu-ray/79分
監督、録音:クロエ・アンゲノー、ガスパル・スリタ
脚本:クロエ・アンゲノー
編集:エリザベス・サシエ、クロエ・アンゲノー
製作会社、提供:Teorema Films
ナポリのサニタ地区、4世代からなる女ばかりの一家が暮らす部屋。窓と壁、簡素な家具しかない狭い室内で大半の時間を過ごす彼女たちは、食事の準備や床掃除といった家庭内の雑事をこなしながら、絶えず身の回りのことがらを喋り続ける。家事労働への不満や娘たちの人間関係への不安を語るきわめて感情豊かな女性たちの声が、外部に広がる世界を一切見せることなく、魅力あるドラマを形成する。平穏な日常そのものに向かい合う映画的探求。
【監督のことば】ナポリに暮らす家族の日常をカメラに収めようと思い立ち、この映画は始まった。4世代にわたる5人の女性がバッソ(ナポリ特有の狭い平屋建ての住宅)でともに暮らす物語だ。私たちが興味を持ったのは、この部屋の中で彼女たちが織りなす日々の営みの積み重ねで、私たちはそれを「日常生活のバレエ」と呼んでいた。彼女たちは毎日、同じ家の仕事を終わることなく続けている。
よもや6年以上もこの映画を撮影するとは思ってもいなかった。私たちは何度もあの場所に戻った。まだ撮影が足りないと感じていたからだ。最後の旅では、偶然にもあの家の日常も終わりを迎えようとしていた。娘たちはすでに家を出て子どもを持ち、ずっと家を空けていた息子が刑務所から戻ってきた。そして最後は、年老いた女性たちだけが家に残された。
撮影期間中、彼女たちの生活に最も大きな衝撃を与えた出来事の数々(誕生、死、収監)は、カメラに収められていない。それらは会話を通して浮き彫りになり、室内の様子の変化を通して、その存在が感じられる。大きな出来事は、いわば失われたイメージのようなものであり、語らないことによって語られる。どんなに劇的な出来事でも、つねに彼女たちの日常に呑み込まれ、埋没していく。同じ動作が終わることなく続き、いつしか一種の儀式になる。家事はセレモニーになり、部屋はチャペルになる。
彼女たちは、家の中でほとんどの時間を過ごしている。外に出ても家の近所だけのため(前の道路は家の一部のようになっている)、この閉塞感を表現するメタファーとして、広角の固定カメラのみを使って撮影した。クローズアップは映画の終わりで初めて登場する。家族一緒の生活から個々の人生へと移っていく様を表現するためだ。
1982年パリ生まれ。パリで人類学を学び、その土地に関するステレオタイプをフィールドワークするためナポリを訪れ、哲学も学ぶ。パリに戻るとドキュメンタリー映画の制作に専念。パリの制作プロダクションでスクリプトドクターを務めた後、他の制作者と共同で、主にドキュメンタリー映画やテレビ番組の脚本・演出を手がけ、並行して独自の映画プロジェクトも進める。2008年、本作の冒頭部分を撮影。2010年にガスパル・スリタと出会い、芸術活動のパートナーとなる。本作は6年かけて撮影され、彼女にとって初の長編ドキュメンタリーである。
ガスパル・スリタ
1974年チリ生まれ。チリで映画を学ぶ。その後、撮影監督、映画のポストプロダクションを経て、ドキュメンタリー映画の制作と監督業に進出。2001年に渡仏し、脚本と詩を書くかたわら、短編映画とミュージックビデオの監督を務める。2006年、自身のドキュメンタリー制作プロダクション、アンコラ・フィルムズを設立。2009年にはヨーロッパのドキュメンタリー映画研修プログラム、ユーロドックに参加した。2010年からクロエ・アンゲノーとの共同作業を開始し、本作の共同監督、撮影監督、さらに制作責任者を務めた。