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青年★趙(チャオ)

A Young Patriot
少年*小趙

- 中国、フランス、アメリカ/2015/中国語/カラー/Blu-ray/106分

監督:杜海濱(ドゥ・ハイビン)
撮影:劉愛國(リウ・アイグォ) 編集:メアリー・スティーヴン 録音:デルフィーヌ・アメイユ 製作:蔣顯斌(ベン・ツィアン)
製作会社、配給:CNEX www.cnex.org.cn

シャオ・チャオは山西省の小さな村に暮らす高校生。日本の尖閣諸島“占領”に憤り、人民服姿で国旗を掲げ、愛国を叫んで人気者になる。一方、大学受験に失敗した後、アルバイトしたホテルで、日本人旅行者の礼儀正しさに思わず感心する。その後入学した大学では、共産党学生連合広報部で活躍し、少数民族の子どもに北京官話を教えるボランティアにも参加するシャオ・チャオ。だが、祖父母の家が再開発のため破壊されたり、地元有力者の腐敗を目の当たりにするうち、愛国の思いに微妙な変化が生じていく。



【監督のことば】1970年代に生まれた私は、若い世代、特に1990年代以降に生まれた若者との隔たりが年々大きくなるのを感じている。その事実が、ドキュメンタリー映画作家としての私を不安にさせる。

 2009年10月、全くの偶然からこの映画の主人公である趙昶通(チャオ・シャントン)(通称シャオ・チャオ)と知り合った。彼は平遥の古都の路上で中国国旗を高々と掲げ、学生たちの先頭に立ち、国を愛する熱い気持ちを声高に訴えていた。あれは中華人民共和国の建国60周年に当たる日で、国中で様々な行事やお祝いが行われていた。

 それからしばらくたっても、シャオ・チャオの姿は私の脳裏を離れなかった。そこで私は考えた。彼と出会ったのは、神の意志なのかもしれない。彼を通じて現代の若者についてもっとよく知りなさいということなのだろう。私は制作チームとともにまた撮影を始めた。今回の撮影には、ほぼ5年を費やすことになった。

 その間、シャオ・チャオは、熱狂的な愛国少年から大人の大学生へと成長した。初めての恋と失恋を経験し、そしていくつかの栄光と挫折も経験した。家族との出会いと別れ、また一家の古い家が取り壊されるのを目撃した。私たちは、シャオ・チャオが経験した小さな変化をカメラに収めていった。彼の姿を通して、私は自分自身を明確に認識することができる。そして、現代の若者を取り巻く情勢や、彼らが考えていることを具体的に理解できるのだ。

 とはいえ、映画の撮影で目撃したことを自分のなかに取り込み、きちんと消化するまでは、得体の知れぬ感情に襲われることが何度もあった。その感情を語る言葉が見つからなかった。私がただ鈍いだけなのか、それともこれが「新しい正常」というものなのか。

 撮影が行われた期間、中国もまた、社会の根幹が揺さぶられる変化を経験し、隠れていた矛盾が浮き彫りになった。その変化の渦に巻き込まれた私たちは、深い無力感に苛まれながら、得体の知れぬ興奮も感じている。いずれにせよ、ドキュメンタリーという手法を用いてある特定の感情を表現できるのは、私にとって幸運なことだ。


- 杜海濱(ドゥ・ハイビン)

1972年、陝西省西安生まれ。子どもの頃に絵を習い、1993年より北京美術学院で絵画と写真を学ぶ。1998年以降、ドキュメンタリー映画制作と撮影の仕事をするようになる。2000年に北京電影学院の撮影学科を卒業。これまでに多数の長編ドキュメンタリー映画と2本の劇映画を監督。主な作品に『線路沿い』(2000、YIDFF 2001アジア千波万波特別賞)、『Beautiful Men』(2005、釜山国際映画祭最優秀アジアドキュメンタリー映画賞)、『1428』(2009、ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で最優秀ドキュメンタリー映画賞)。本作は香港国際映画祭で審査員賞を受賞している。