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トトと二人の姉

Toto and His Sisters
Toto si surorile lui

- ルーマニア/2014/ルーマニア語/カラー/DCP/93分

監督、脚本、撮影:アレクサンダー・ナナウ
編集:ミルチャ・オルテヌ、ゲオルグ・クラッグ、アレクサンダー・ナナウ
録音:マティアス・ランパート
エグゼクティブ・プロデューサー:ビアンカ・オアナ
製作:ヴァレリュ・ニコレ、ケイタリン・ミトゥレスク、アレクサンダー・ナナウ、マルシャン・ラザール
製作会社:Strada Film
配給:Autlook Filmsales GmbH www.autlookfilms.com

ルーマニアで暮らす10歳の少年トトにとって、一日を無事に過ごすことはほとんど奇跡に近い。なぜなら父は不在で母は刑務所に収監中。17歳の長姉は麻薬絡みで警察に捕まり、安全なはずの自宅は保護者不在で、不良たちの巣窟と化した。心の平静を保つことさえ困難なこの逆境から、トトは15歳の次姉アンドレアとともに未来を拓こうとする。穢れなき子どもの魂を見出しつつ、いまも世界のどこかで、大人になれぬ人間たちに翻弄されながら生きる、少年少女の悲しい現実を突きつける一作。



【監督のことば】私たちを私たちたらしめているものは何か、そして子ども時代に模範となる大人をどう選ぶかという問いが、この映画の核心を占めている。9ヶ月の調査の後、私はトトと二人の姉の物語を語ることにした。母親がおらず、貧困や暴力、ドラッグがはびこる環境で育ちつつ、その苦境をこえて人生の豊かさを見る強さをそなえた子どもたちの物語を。

 3人の物語はひとつのメタファーであり、それは他の多くの子どもたち、人生のある地点で運命が決してしまったかのような子どもたちにも当て嵌めることができる。主人公らのような境遇に生まれた者たちがいるということは、思うに運の問題としか言いようがなく、当人の能力や目標意識とは何ら関係がない。その将来の展望や想像力を育むうえで鍵となるのは、むしろどのモデルが選択され、どのような人生を進むかである。

 重要なのは、この映画がショックを与えたり、スラムの悲惨さを強調したりしようとするのでなく、観る者がそこに入り込みやすいものであり続けることだ。暴力やドラッグは、まさに主人公たちがその目で、その身体で感じたままに、生活の一部としてそれがあるという風に理解されなければならない。

 このコンセプトを裏書きすべく、多くの場合、カメラの位置は子どもたちの身長に合わせられている。この映画は、子どもたちを「小さく弱い」存在として、大人の立場から見下ろすものではない。子どもたちの目を通して、彼らと同じ目線の高さで、対等な立場から見るのである。私がこの物語を語るうえで観察型ドキュメンタリーという形式に惹かれるのは、語り手としての私が不可視となり、観る人が映画の中の人物と直接触れ合うことができるからだ。

 物語が親密さを維持するのに重要な要素となっているのは、トトの姉アンドレアが自分で撮影し、その生活を記録したビデオ素材である。彼らについての映画というだけでなく、彼らとともに作った映画なのだ。


- アレクサンダー・ナナウ

ルーマニア生まれのドイツ人映画監督。ベルリン映画テレビアカデミー(DFFB)で演出を学ぶ。2010年、ドキュメンタリー作品『The World According to Ion B.』(2010)が国際エミー賞芸術番組部門で受賞。この作品は全世界で50以上の映画祭に出品された。長編ドキュメンタリー第1作『Peter Zadek inszeniert Peer Gynt』(2006)は、2006年にドイツとオーストリアで劇場公開されている。