アジア千波万波 |
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アジア千波万波 特別招待作品 審査員 |
審査員
大木裕之
●審査員のことば
今、そしてこれから、わたしたちが生きていくうえで映像がどのような可能性や力やよろこびをもちうるか。
携帯やパソコンでの多くの積極的・消極的個人画像・他者画像〜やりとり、まちで触れざるをえない多くのイメージ(広告?)映像・ビジュアル、そしてリアルタイムなニュースやテレビ世界、各種ソフト、そして映画館で体験する映画作品や……さまざまな形で現にあらわれ、それらと個人がどう関わり、かつ個人をこえて流動的に形成されてゆく概念、モラル、信条、イメージがふたたび個人や家庭やコミュニティにフィードバックされる時代。その(精神的、文化的、経済的、政治的)状況認識の中で映像⇔映像作品⇔アート? を問いつづける身として、このたびの山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波に集まった作品がそれぞれに、かつ全体でなにをみせてくれるのか、そしてなにを見出し感じることができるのか、楽しみです。
1964年、東京生まれ、高知県在住。'88年東京大学工学部建築学科卒業。在学中より映画制作を始める。 '89年イメージフォーラム付属映像研究所卒業。卒業制作で3時間の8mm映画作品『松前君の映画』を発表。その後「松前君シリーズ」として、毎年撮影発表を続け、今年で20年目を迎える。'91年高知に移住、制作の中心を高知に移し、高知県立美術館製作による映画『HEAVEN-6-BOX』(1995)がベルリン国際映画祭ネットパック賞受賞。その後はビデオやインスタレーション、パフォーマンスなどに活動をひろげ、各地でアクションしつづけている。高知よさこい祭りではチーム「M・I」を率いて2000年より毎年参加。YIDFFでは、 '91、'97、'99、2007年に作品が上映されている。 |
哪木(ナム)
NA-MU-
日本/2004-2009/ 日本語、英語、ネパール語、チベット語、トルコ語、ヘブライ語、アラビア語/ カラー/ビデオ/70分
監督、撮影、編集:大木裕之
プロデューサー:藤田敏正、以倉寿哉
製作会社:FOU プロダクション、イクラプロ、大きい木
特別感謝:佐野画廊
配給:FOU プロダクション
毎年、香川にての10日間8月22日から8月31日までの撮影をベースに制作しつづけている作品群「デジシリーズ」の、第7作が『哪木(ナム)』である。
2004年7/1〜7/10の10日間イスラエル、パレスチナ、トルコでの撮影を皮切りに、2004年8/22〜8/31の香川10日間をベース、2004年9/19〜9/28・ネパール→チベットの10日間……
私の父の一回忌である9月28日チベット・ラサ〜ターツェで撮影を終えて、2004年の三重構造の根幹を据える。
2005年夏秋に流体イメージの撮影を東京、高知、大阪、岡山メインに、さらに、2006、2007と7/1〜7/10の10日間撮影を加え、厳密に1章7分×10=10章70分の時間構造をもつ6層の映像音響6重奏である『哪木』の姿が現れる。
「生きている」のテーマをもとに、時々の思考、編集、発表、撮影を状況とコラボ〜アクションして「生き」つづけ、「イ ― 移植」「(聖トモキの)奈落」「卑(ヒ)」などのイメージが産まれながら、2009年7月「風」としての撮影ののち編集された最新バージョンが、この『哪木』(山形MIX)である。
(大木裕之)