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    Ximaojia Universe
    神衍像

    - 中国/2009/中国語/カラー/ビデオ/76分

    督、撮影、編集:毛晨雨(マオ・チェンユ)
    製作:向華(シアン・ホァ) 
    共同製作: 張亜璇(ジャン・ヤーシュアン)
    製作会社、提供:第二文本工作室
    www.paddyfilm.org

    監督の出身地、湖南省岳陽にある細毛家は、11家族20人あまりで形成される村ともいえる。監督は、共同体の一員、そして映像作家として、過去の遺物、今を生きる人々、未来の歴史をつないでいくという考古学的記録作業に積極的に介入し、消え去ったものをも再現していく。ここにある人々の日常、神話や伝承に受け継がれる世界観を引用しながら、その新しい解釈を試みようとする壮大な実験民俗誌ドキュメンタリー。



    【監督のことば】 私の仕事場は、ずっと水田地帯だった。稲の魂とその思想を描いてきた自分の作品を、私は“稲映画”と呼んでいる。

     ドキュメンタリー映画を撮り始めたころ、ある日本人監督が稲を撮るために、数年間田植えをし、稲を育てたことをインターネットで知った。稲を介して語り、長い時間をかけて撮影された彼の作品は、日本の農村社会を描いた風土絵巻だ。

     彼の名は小川紳介。小川氏がおこなってきた活動は私に真摯に教えてくれる。映画制作の目的と意義は未知なる宇宙に存在し、創作し生きようとする建設的意欲は、その宇宙に蓄えられているのかもしれないと。

     目先の利益に汲々とし真の理想を持たないこの時代にのめり込み、積極的に生きようとしている我々は、多くの誠実な声を聞き逃しがちである。だがそれでもなお、言葉にできないある種の幸せが感じられる。だからこそ小川氏は、私の制作理念においてひとつの揺るがぬ基準となっている。私には十分な誠意と純真さが必要なのである。中国の広大な農村社会に機材を据えるとき、機材は私に幸福を与えてくれる。そして今まさに崩壊せんとする周縁社会のために、強い意志をもって、いささかの良心とあふれる志を備えた作品を作らねばならないのだと私を戒める。だから私は、歴史の相違を描くという、強い意志を必要とする道を選んだ。

     2008年、私は腫瘍摘出の大手術を受けた。その時、自分がどれほど故郷を求めていたかに気づき、『細毛家の宇宙』を撮りはじめた。人生は、時に稲に似ている。生死にかかわる病は、私という稲を襲った常ならぬ災害だった。「俺は生きている」という、この一事に勝る大事件はない個人の運命とは、歴史を前にすればなんとちっぽけなものか。そして不意に、私は幸運にしてずっと追い求めてきたことを意識した。私が農民出身であること、稲のDNAを持っていること、私の知識がありふれた表現を拒否していること、さらには命に執着しない私の態度と、命を与えられた以上は担わねばならない歴史の意志のことを。

     私は幸福を感じながらこの文章を記している。その幸福は心の中でますます大きくなっている。


    - 毛晨雨(マオ・チェンユ)

    湖南省生まれ。上海の同済大学で工学を専攻し、2000年に卒業。その後は人類学的な映画の制作に従事する。2006年には、民族の多様性を描写し、歴史の欠落を埋めるという、彼の映画のコンセプトを実践し続けるために、第二文本工作室を設立。主な作品は、ドキュメンタリー映画『Soul Mountain』(2004)、『Human, Ghost, God』(2005)、『A Story of Zeng Wuhua』(2006)、『The Tale of Making a Vow』(2008)、『The Tale of Zhenyuan County』(2008)、劇映画『Da Jiang Meeting a Ghost』(2007)、『The Tale of Two Sisters』(2007)など。