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    シャブナム・ヴィルマニ


    -●審査員のことば

     1997年に山形を訪れたときのことをふり返ると、観客たちの熱狂と好奇心が鮮やかによみがえる。しかもその観客は、家庭の主婦や、普段映画には縁のない人、一般の市民たちだ。夜遅い上映にも参加し、はるか遠く離れた場所の政治や社会問題について、映画作家たちと熱心に議論を戦わせる姿を見て、私は驚いた。私の故郷インドでは、一般の観客はドキュメンタリー映画という形式にほとんど関心を持っていない。そのため私は、かつて山形で目撃したドキュメンタリーをめぐる祝祭精神と興奮に身を浸すのを、心から楽しみにしている。前回訪れてから10年以上の時を経て、今回、審査員として参加できるのは、喜びであり、名誉なことだ。

     映画形式としてのドキュメンタリーの衰退を語る、さまざまな批判や暗い見通しはあるが、それでもドキュメンタリーは生き続けている。私がドキュメンタリーから刺激を受け続けている理由のひとつは、それが“現実”を記録するからではなく、現実と作り物の境界が曖昧であるということを、明らかにしてくれるからだ。私たちは日常の中においても自然な行動と演技の間を、常に行き来している。そしてカメラの存在は、両者の間にある緊張をさらに高めている。私にとってドキュメンタリーが持つ魔法とは、この自然と演技のせめぎ合いと、普通の人々が見せる表情をカメラでとらえ、それらを素材に芸術的な語りを構築していくことだ。台本のない瞬間を生きる現実の人々は、ドキュメンタリーの持つ優しく鋭い眼差しでとらえられると、見る者の心の奥深くに触れる力を持つ。なぜなら、台本のない日々の生活には、とてもドラマティックな何かが潜んでいるからだ。


    インドの草の根女性グループと緊密に協力しながらドキュメンタリーやラジオ番組を監督し、数々の賞を受賞。1990年、アーメダバードにて、メディア、芸術、人権問題を扱う団体、ドリシュティを共同設立。6年前からアーティスト・イン・レジデンスとしてバンガロールのスリシュティ芸術デザイン技術学校にて、カビール・プロジェクトに没頭する。このプロジェクトの一環として、4本の長編ドキュメンタリーを監督し、音楽CDと詩集の企画・編集に携わる。現在はインドの民俗音楽歌手コミュニティと共に、カビールの詩と音楽を集めたネット・ミュージアムを構築中。『さあ、生きよう!』(1996)はYIDFF '97で上映された。


    カビールを巡る旅(4部作)

    Journeys with Kabir

    -
    1. 境界 ― 無限(103分)
      Bounded-Boundless Had-Anhad
    2. 誰かが聞いている(96分)
      Someone Is Listening Koi Sunta Hai
    3. 私の国へ(98分)
      Come To My Country Chalo Hamara Des
    4. バザールに立つカビール(94分)
      In The Market Stands Kabir Kabira Khada Bazaar Mein

    - インド/2008/ヒンディ語、パンジャーブ語、ウルドゥー語、 マールウィ語、英語/カラー/ビデオ

    監督、撮影、録音:シャブナム・ヴィルマニ
    脚本、編集:シャブナム・ヴィルマニ、リカーブ・デサーイ
    アニメーション:オリジット・セーン、M. M. プラディープ
    リサーチ:シャブナム・ヴィルマニ、ターラー・キニ
    演出、製作サポート:ルマー・ラサク、スムリティ・チャンチャニ
    製作会社、提供:スリシュティ芸術デザイン技術学校
    www.kabirproject.org

    現代インドの思想や音楽に息づく15世紀神秘詩人カビールを思索するパーソナル・ロードムービー(4部作)。600年前、バザールで詩を詠み、人々の中に立ち続けたカビールは、神格化されてきた一方で、社会活動家たちの精神や人々の生活の中に生きている。『境界 ― 無限』は、宗教の境を辿って、インドの西から東、やがてパキスタンへと向かう。様々に形を変え、表現されるカビールに耳を澄ます『誰かが聞いている』。監督と共に旅を続ける歌手ティパンヤと研究者ヘスに焦点を当て、文化を越境するカビールを祝福する『私の国へ』。『バザールに立つカビール』で描かれる、宗教と世俗の間を生きるダリトである歌手ティパンヤの葛藤。インド各地に根ざす言霊とリズムに身を沈め、全4作を駆け抜ける!