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アジア千波万波 特別招待作品 審査員 |
ビラル
Bilal-
インド/2008/ベンガル語/カラー/ビデオ/88分
監督、撮影、編集、録音、製作、提供:ソーラヴ・サーランギ
製作会社:ソン・エ・リュミエール
共同製作会社:ミレニアム・フィルム
www.bilal.in
コルカタの喧騒の中、狭い部屋に弟と盲目の両親と暮らす3歳のビラル。この家と路地、画面から、はみ出さんばかりのやんちゃぶり。両親とは音と手触りでコミュニケーションをとり、近隣の人たちとの共同体の中で、ビラルは育まれる。大人にとって何気ない日常が、子どもにとっては大きな宇宙なんだ、という懐かしくもある眼差し。両親の目となり、カメラの目となり、スラム街のざわざわ感あふれるビラル・ワールドへと誘う。
【監督のことば】 妻を介して初めてビラルに会ったとき、彼は病院のベッドにいた。まだ生後8カ月で、転んだために脳に重傷を負っていた。
私はただ黙って立ちつくし、生きようと必死に戦う赤ん坊を見つめていた。目の見えない母親が赤ん坊をぎゅっと抱きしめている。ビラルはしばらくの間、私をじっと見て……そしてようやく、ほほえんだ。ビラルは母親に優しく触れた。そうやって私の存在を母親に知らせたのだ! 私はビラルの手が伝える魔法を感じ取り、そして目を見た。美しいビラルの目……闇がおおう世界の中にある、愛と希望を伝える目……。
そうしてビラルと過ごした時間をつなぎ合わせ、この映画ができあがった。
ソーラヴ・サーランギ 1964年生まれ。最初は地質学を学ぶも、後にインドの名門映画学校、FTIIで編集を学ぶ。現在は独立系プロデューサー、監督として国際共同制作に参加。ドキュメンタリーとフィクションを含む監督作は受賞歴があり、広く上映されている。インドの民放でも、プログラミング・ディレクターとして多岐にわたって活躍。時間をかけて登場人物たちを観察し、彼らと交流することで内なる現実を映画的に引き出す、ミニマリズム的でシンプルな作品を作る。 |