アジア千波万波 |
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アジア千波万波 特別招待作品 審査員 |
長居青春酔夢歌
Nagai Park Elegy-
日本/2009/日本語/カラー/ビデオ/69分
監督、撮影、編集:NDS 佐藤零郎
撮影協力:張領太、児嶋房子、中村葉子、布川徹郎
音構成:浦田晴夫、市川和孝
音楽:ありちこく
製作:NDS(中崎町ドキュメンタリースペース)
提供:川人リゑ
2007年の夏に控えた世界陸上のため、長居公園では野宿者たちの強制排除が始まった。公園で最後まで演劇をしたい野宿者、支援者の一枚岩ではない、様々な思いが監督の視線と交錯し、カメラが公園や路上でのアクションを記録する。そして、最後の「舞台」が幕を開ける。「この世界はすべてこれひとつの舞台、人間は男女を問わず すべてこれ役者にすぎぬ」。出演:大阪建設局のガードマンなど500人、報道陣、見物人、支援者、野宿者、撮影者。
【監督のことば】 「2007年2月5日長居公園テント村はテントが潰される中芝居をした」。
この映画で伝えたいことはこの一文に凝縮されている。その日、長居テント村はお昼になる頃には、はじめから何もなかったかのように、跡形もなくなっていた。しかし、何かは、確実に浸透している。
1年前、同じ大阪市内のうつぼ・大阪城公園で強制代執行の現場でテントが潰されるのを撮影した。
テントを潰される中で私は何も感じずにいた。私は今潰されているテントが、誰のテントかも知らずに黙々と撮影をした。自分のテントが潰されているわけでもないのに、怒り叫ぶ人達を怪訝な目で見ながら。
その半年後、長居公園テント村が立ち退きを要請されているのを知った。いずれは強制代執行が来ることは誰もが知っていた。
私は1年前のような、自分自身が何も感じていない映像は撮りたくないと思った。単身長居テント村で生活し、カメラを廻しだした。
公園でのテント生活の厳しさ、また路上生活はさらに厳しいこと、野宿生活者に対する侮蔑的な眼差し。長居テント村はコミュニティみたいなものが形成され、個々のつながりがあった。そこには自分と同年代の若者も集まっていた。なんとか生きながらえている人達がいた。テントがいつ潰されるかもわからない不安な状況下で、私は長居テント村での関係も深まり、テント暮らしを半ば楽しみつつあった。
しかし、私はテントが潰される瞬間を待ち望んで撮りにきたのだった。自分のテントが潰されるのを怒り、泣き、叫ぶ人達をカメラで撮りに。
そして、彼らは私以上に知っていた、私が何をしにこの公園に来たのかを。
NDS 佐藤零郎(前列中央) 1981年、京都生まれ。2006年11月、『長居青春酔夢歌』を撮影開始。2009年5月に完成。2007年8月頃より大阪の中崎町周辺でドキュメンタリストを志す熱き者たちで互いに自分たちの制作途中の作品を批評し合うことや、先人たちのドキュメンタリー映画、劇映画、実験映像などを批評することで力をつけてきた。現在、『中村のイヤギ』の張領太や梶井洋志、中村葉子、金稔万、布川徹郎らとともにドキュメンタリー映画制作集団(中崎町ドキュメンタリースペース)をつくろうと企んでいる。現在尼崎市在住。 |