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孤独な存在

Lone Existence
独自存在

- 中国/2016/中国語/カラー/Blu-ray/77分

監督、撮影、編集、提供:沙青(シャー・チン)

彼は何年もの間、家から出ることなく、締め切ったドアの内側で、誰とも会話することなく過ごしてきた。いままで向き合うのを避けてきた、隠された自己を投影する他者の存在を、カメラでひたすらに観察する欲望だけが、彼の生をつないでいる。夢幻的な日常風景に息づく他者のイメージを通して、彼は魂の自由を得られるのか? 『一緒の時』(YIDFF 2003)の沙青監督が、作家として、他者や自己を見つめることの根源を問う。



【監督のことば】12年前、新作の準備をしていた私は、ひどく落ち着かない気分にとらわれていた。またしても私は、他人を記録する映画を作りつつも、自己を隠蔽しようとしているのだろうか。そうでないにしても、自己を表出するとなったとき、どうするのが適切と考えられるのだろうか。私の個人的な生を描くだけのものにならないためにはどうすればよいのだろう?

 手がかりを求めて、私は試行錯誤を開始した。カメラのレンズを通して、何年も前から魅了されてきたいくつかの顔を観察することを始めたのだ。眼前の彼らの、簡潔でぎこちない、ほとんど剥き出しの生は、ただあるがままにある。私は想像のなかで、彼らとともにその家に入り込み、彼らの生において長い日々をやり過ごす助けとなる輝かしい瞬間とはどんなものか推し量ろうとした。しかし、言葉が信じられない、あるいは単に人見知りということもあるのだろう。私が実際にあえてそれを突き止めることはなかった。

 6年後、私は他の人びとを観察したものを、一篇の映画にまとめ上げた。それでも、あの落ち着かない気分が消えることはなかった。だから私は、自分の作品はまだ完成していないと感じていた。

 また数年が経ち、私はどん底にいるような気分に陥っていた。こんな気持ちになったのは初めてのことだった。しかし、まさしくこのとき、生はその尋常ならざる力を開示したのである。崖っぷちからどうにか復帰し、私は新たに限られた生を生きられるようになっていた。あれほど長らく望んでいた気力や活力が、私のなかを満たしたのである。

 制作作業を再開すると、かつて自分を悩ませた、にもかかわらず実際に掘り下げることのなかったあれらの問いのいっさいが、ふたたび私の脳裡に浮上してきた。私に悟りが訪れたのは、過去の哲学者や賢人が遺してくれた励ましの言葉やその徴に目を向けるようになったときのことである。他者の顕在化とともに自己を見出すことが、生の本質を開示したいという欲望を可能にすることを、ようやく私は理解したのである。


- 沙青(シャー・チン)

1965年、北京生まれ。録音・編集技師として数々のドキュメンタリー映画制作に携わった後、2002年にデビュー作『一緒の時』を完成させる。同作はYIDFF 2003アジア千波万波で小川紳介賞、ヴィジョン・デュ・レール2004でスイス映画賞を受賞。『孤独な存在』は、かつて2010年に一度完成させた『消逝的倒影(Fading Reflections)』に手を加え、さらに発展させたものである。